農地保全に貢献した消費者に出す表彰状
農地保全に貢献した消費者に出す表彰状
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 重要なのは、この感謝状と表彰状だ。例えば、感謝状には「あなたが購入された、東大阪市産農産物の生産面積が5㎡(1m×5m)に達しました!!」と書いてある。表彰状にも「ファームマイレージが50㎡に達した功績に感謝し表彰します」と明記。こうして、消費者はエコ農産物を買うことで、近隣の農地の保全に貢献したことを知る。

 これは都市という農業をやるには不利な条件を逆手にとった作戦だ。そもそも、ブランド化のために農薬や化学肥料の使用量を減らすことじたい、それほど珍しいことではない。だが、都市の農地には、消費者が日常的に目にすることができるという特徴がある。目の前にある田畑が、環境に優しい農業で守られる。そのことに、自分も貢献していることを消費者に感じてもらうのが、東大阪市の運動の核心部分なのだ。

つくり手としてやってきてよかった

 残る課題は、生産者のモチベーション。もう想像がつくことだろうが、エコ農産物のシールには消費者の名前や連絡先が書いてある。そして、自分が買い、食べた農産物がおいしいと感じれば、消費者は生産者に「またつくってね」などと電話する。くり返しになるが、田畑が目の前にあるというリアリティーと、運動にも自分も参加しているという実感が、消費者をこうした行動に促す。

 「農業ってしんどいわ。金もうからんからなあ」。以前、田中さんは生産者からこんな言葉を聞くことが少なくなかった。だが、消費者から「おいしかったよ」と電話が来るだけで、生産者の気持ちが変わる。「おれは職人として、つくり手としてやってきてよかった」。高齢の農家が、目を輝かしながらこんなふうに話すようになったという。

 経済的なメリットもある。農協の直売所に出すというシンプルな流通の仕組みであるため、生産者が受け取る金額は、市場に出荷する場合と比べておおむね2倍。だから、生産者は手間暇かけていいものをつくろうという気になる。しかも、店頭価格はスーパーより安い。

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