ただし、すべての農家がこの方法に賛同してくれるわけではない。トレードによると、契約農家は30歳から50歳ぐらいが中心という。平均年齢が70歳に迫る日本の農家のなかでは若いほうだ。しかも、会社勤めをした経験のある人ほど、トレードとの取引を「やりやすい」と感じてくれるという。相場に左右される農業の世界に違和感を抱いているからだ。前回紹介した30代の農家ももとはサラリーマンだった。

飽和感はまったくない

 最後につけ加えるが、スプレッドの植物工場レタスも、トレードの洛市も、一気に販路を全国に広げ、なお拡大し続けているのは、グループに物流会社があるからだ。トレードがもともと手がけてきた、各地の市場間の野菜の売買というインフラがあるからこそ、いままで多くの事業者が挑み、はね返されてきた壁を乗り越えつつあるのだ。

 以上が、5年前に突如登場した京野菜ブランド、洛市の戦略だ。売り上げは2016年3月期が約4億円、17年3月期が約5億円で、今年度は7億円を見込んでいる。順調に伸びているといっていいだろう。需要の拡大を前に、木村氏の鼻息はなお荒い。

 「売り先も仕入れ先もどんどん増えている。飽和感はまったくない」

 閉塞感が漂う日本の農産物市場だが、アイデア次第で新たなマーケットを開拓することができることを、トレードグループは証明している。今後の展開に注目したい。

新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売