まず始めたのは、生産者を回るローラー作戦だ。数人の担当者が京都府内の農家を手分けして訪ねて回った。原始的なやり方に見えるかもしれないが、既存の市場流通では量が不安定になる以上、農家と直接結びつくしか方法がなかった。スタート時点の農家数は約30軒。2年ほど前から口コミで評判が広がり、農家を紹介してもらえるようになって勢いがつき、いまは270軒ほどに増えた。

「農家ありきのビジネス」の3条件

 トレードが農家を開拓する際に考えたのは、「農家は何が大変で、何に困っているのか」ということだった。その結果、提示した条件が3つある。相場がいくら下がっても約束した値段を変えず、発注した量を買い取る。袋や箱はトレードが用意する。グループの物流会社が農家のところまで集荷に行く。

 これを木村氏は「農家に寄り添う、農家ありきのビジネス」と説明する。もちろんそうは言っても、農家が喜ぶからといって、値段を青天井で上げるわけにはいかない。そこは、ローラー作戦で一軒一軒農家を回りながら、品目ごとに「農家が納得してくれる値段」を探っていった。そうやって品ぞろえを徐々に増やし、品目数は約50に達した。

洛市の品目数は約50ある

 こう書いてくると、「時代遅れのプロダクト・アウトの発想ではないか」と思う人がいるかもしれない。まさにその通り。トレードのグループ会社で、植物工場ベンチャーのスプレッド(京都市)は、店頭でレタスがいくらで売れるかを考えてから逆算し、工場の生産性と効率を高めた。需要から考える「マーケット・イン」の戦略だ。

 これに対し、トレードは洛市ブランドの野菜を小売店に売り込む際、「生産者の目線」を貫いた。ふつうスーパーの仕入れは、「店頭で売りたいものを、売りたいだけ発注する」という方法で成り立っている。発注量は必ずしも一定ではない。一方、トレードは「売る量をまず固定したうえで、農家につくってもらう仕組み。入り口に出口を合わせることはできますか」と説明した。