洛市のブランドを立ち上げたトレードの木村友哉氏(京都市)

 抽象的な問いかけに聞こえるかもしれないが、木村氏には長年の思いがある。実家は京都の八百屋。いったん百貨店の野菜売り場で働き、実家でも働いたあと、トレードに入って全国規模の野菜流通の仕事を始めた。

 洛市を立ち上げる動機のひとつになったのは、「百貨店やスーパーは入荷した商品にただ利ざやを乗せ、値段を変えて売っているだけではないか」という思いだった。バイヤーたちは本当に「目利き」として品質を見比べているだろうかという疑問がそこにはある。

ないときは、とことんない

 洛市の戦略に入る前に、なぜ、本来ポテンシャルがあるはずの京野菜が全国の売り場で定着しなかったのかを考えてみよう。理由はシンプル。値段が割高だからだ。背景に、通年でどんな野菜でもあるのが当たり前になっている店頭と、生産現場とのズレがある。

 出荷できる野菜が季節に左右されるのは、どの産地も共通。しかも、京都は大産地と違って各農家の栽培規模が小さく、そもそもまとまった量を確保するのが難しい。木村氏の言葉を借りると、「ないときはとことんない」。それなのに「京都ならミズナがあるはずだ」といった感覚で発注するから、セリで高値で買われた品薄のミズナが、消費地に届く。その結果、「京野菜は高い」というイメージが定着してしまった。

 ここで「価格」と「量」という2つのキーワードが結びつく。洛市を立ち上げるに当たって、トレードが目指したのは「価値に見合った価格」を実現することだった。当然、それは「不当な高値」をつけることではない。そうしないためにも、木村氏が「強い産地」の条件として指摘した「量」を確保することが必要だった。