そもそも、野菜のつくり方についての情報は、いまやネットのなかにあふれかえっている。熱心な会員なら、すぐに深い情報にたどりつくことができる。それを実際に試してみるのが、農園の価値とも言える。田村さんは「スタッフがそれに対抗し、栽培方法をつきつめるには限界がある」と話す。くり返しになるが方針は、「失敗も体験のひとつ」という発想だ。

 これは、スタッフの採用方針にも関係してくる。プロ農家の農場で研修し、栽培技術に自負のある人が採用されることはあまり多くない。それよりも、家庭菜園の延長で野菜づくりが好きになったり、べつのアルバイトで接客経験があったりする人のほうが、採用されやすい。

「一歩手前」の「自産自消」で

 こう見てくると、一見、バラツキがあるように感じるマイファームの農園の「統一感」が浮かびあがってくる。同社は農園のコンセプトを「自産自消」という言葉で表現している。もし、自給自足を目指すなら、厳しい生産管理や、生活水準の見直しを含めたストイックさが必要になるだろう。

 これに対し、様々な意味で「一歩手前」に踏みとどまることで、農作業を通した人とのコミュニケーションや学びが可能になるのだ。その過程で、手間をかけないといい農作物はできないことを会員が知れば、プロ農家へのリスペクトにもつながるかもしれない。

体験農園のニーズはますます拡大中(マイファームの体験農園、横浜市神奈川区片倉)

 ちなみに、マイファームはこれまで約120カ所で農園を開いたが、うちいくつかは閉園し、農家である地主に返したという。農家が「おれもう一回農業やる」と訴えてきたからだ。農園の縮小ではあるが、耕作放棄地の解消という同社のそもそもの目的にはかなう結果だ。その農家のやる気を、一心に野菜を育てる会員たちの姿が引き出したのなら、これ以上の成果はないだろう。

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