そんななか、とくに目を引いたのが、農園のあちこちに咲いている花だった。この体験農園は、花を植えることも認めているのか。そう思い、取材に対応してくれた農園事業部の田村征士さんに聞くと、予想外の答えが返ってきた。

 「これ、ブロッコリーです」

 ブロッコリーはキャベツと同じアブラナ科の野菜で、緑色の花のつぼみと茎が食用になる。ということは、ネットで調べればだれでもわかる。では、もし食べずに育つにまかせれば、どうなるか。それがこの姿。食用の形のなごりをとどめず、豊かに茂って黄色い花を咲かせている。

収穫を逃し、花が咲いたブロッコリー(マイファームの体験農園、横浜市神奈川区片倉)

 べつの花はもっとわかりやすかった。ブロッコリーと比べ、花弁がもっと大きくて色がはっきりした植物の名は春菊。その名の通り、この「作物」が育ち、花を開けば野菊の姿になることがよくわかった。

春菊も育つと野菊そのものになる(マイファームの体験農園、横浜市神奈川区片倉)

問いかけが「学びの農園」の価値

 田村さんによると、こういう問いかけこそ農園の価値なのだという。ブロッコリーは食用にするのはもう無理。春菊も花が咲いてしまうと旬が過ぎ、味が落ちる。野菜の栽培という意味では、うまくいかなかったと言うべきかもしれない。ただし、その結果ほかの会員は、ブロッコリーや春菊が、本来、どんな姿をした植物なのかを知ることができる。食材の生産が体験農園の唯一の目的と考えれば、これはマイナスになる。だが、農園を「学びの場」と考えれば、放っておくことにも意味がある。

 これは、サービスの手抜きではない。もし、各会員に割り当てられた区画を越えて繁茂したり、病害虫でとなりの区画に迷惑がかかったりするようなら、当人に連絡する。そうでなければ、栽培がうまくいかないとどうなるかを知るのも、農園の価値なのだ。田村さんは「失敗も体験してほしい」と話す。

 そう思い、あらためて農園を見まわすと、青々とした麦が整然と直立している一画があった。農園につどう約20人の会員が、「麦を育てよう」と意気投合して借りた一画だという。名前は「小麦部」。収穫した麦は、農園にある釜でパンやピザを焼いて食べる。こんな自由な農園の使い方もありなのだ。