
日本の農業の危機が叫ばれるかたわらで、消費者が農業に参加する体験農園や市民農園が存在感を増している。農業をなりわいとするプロ農家と違い、彼らには特権がある。栽培に失敗してもいい――。田畑を食料生産の基地ではなく、「学びの場」と考えることで、農地を次代につなぐ「もう1つの可能性」が開けてくる。
ゴールデンウイークに、横浜市の小高い丘にある「マイファーム」の体験農園を訪ねた。マイファームは耕作放棄地の再生に取り組むベンチャー企業で、首都圏と近畿圏を中心に約100カ所で体験農園を運営している。加えて、貸農園のコンサルティングや農業者の育成などにも、ビジネスの裾野を広げている。
横浜市の農園を訪ねた日は透き通るような青空が広がり、風がやむと少し汗ばむ陽気だった。農園のある丘から見渡すと、こんもりとした森があちこちに遠望できる。高度成長からバブル時代に都市の緑の多くは宅地や商業地に姿を変えていった。それでもこうした風景が残っている点に、日本社会の新たな可能性を感じ取ることができる。
なぜ「バラツキ」を感じるのか
本題に入ろう。この体験農園を見学したとき、まっさきに感じたのは、「バラツキ」だった。市民農園や体験農園を何カ所か取材したとことがあるが、マイファームの農園には、ある種、カジュアルと言っていいような雰囲気があった。プロ農家のやる農業とはあえて一線を画していると言えばいいだろうか。
べつのある体験農園は、農家がきっちりと指導し、指導にしたがって参加者が協力し合い、順序よく整然と畑の作業が進行していた。べつのある農園は、しろうとの参加者が栽培に失敗しないように、畑を管理するスタッフから本部、本部から参加者へと連絡を密につないでいた。どちらも、収穫の充実を顧客に味わってもらうための工夫だ。
これに対し、マイファームの農園は一見、どういう運営方針なのかつかみにくかった。植わっている作物は、エンドウ豆、ソラ豆、麦、ネギ、ピーマン、ナス、トウモロコシなど様々で、やっと芽が出たばかりの作物もあれば、すでに青々と育った作物もある。
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