個人でシステムを開発できることも強調していますね。

窪田:プログラマーの仕事をしていて、農家を継ぐために実家に戻った人がいます。キュウリをつくっているんですが、忙しいときは選別に8時間くらいかかります。それをお母さんが1人で担当しています。お母さんの仕事を楽にしたいと考え、彼は近所のホームセンターで資材を買って選別機をつくりました。

 重要なのは、キュウリを一個一個置いて、コンピューターで画像診断する仕組みをつくったことです。キュウリはイボの出方、曲がり方、ツヤなどで9つの等級に分かれます。その判別を機械でやってしまおうと考え、ディープランニングで9000枚の画像を読み込ませ、お母さんから見て『精度は私の7割』という水準まで達しました。

 ポイントは、グーグルが提供している『テンサーフロー』というオープンソースがあり、無料でAIを活用できたことです。選別機の細かい部材は3Dプリンターでどんどんつくり、経費はトータルで7万円。メーカーに頼んだら、100万円は超えたでしょう。

ツールを何のために使うのか

著書で描いた近未来の姿と比べ、現実の農業がシステムを使いこなせていないのはなぜでしょう。

窪田:生産者サイドで言えば、『ツールを何のために使うのか』という問いかけがもっとも重要です。どういう情報を取りたいのか。それが明確になっていないから、メーカーのプロダクトをただ使うだけということがまん延しています。

 メーカーも問題を抱えてます。開発にシステムの専門家は入っていますが、農業のことをわかっている人が入っていないんです。どういうデータを取ればいいかが明確でなく、ただデータを取ればいいということで、センサーの数だけ増える。田んぼに付けるセンサーが1台で10万円近くします。いまの米価からすれば、まったく実用的ではありません。

 すると、中には、『センサーに補助金を出してくれ』と言い出すメーカーもあります。過去の農業界と同じ轍(てつ)を踏む話になってしまいます。そういうことをやっていてはダメなんです。構想には評価すべきものはあっても、普及の壁になる価格をもうちょっと考えるべきです。