農家に取材する窪田氏。(写真提供:広告制作室ワーズ)

取材を通して、近未来の農業がどんな姿になると思いましたか。

窪田:本に書いたような光景が遠からず実現すると思ってます。地域によって差はあるでしょうが、最先端の場所で言えば、農作業の管理という意味では圃場にはほとんど人がいなくて、ロボットトラックターが走っているような状態が実現するでしょう。

 人は遠隔地の涼しい部屋でロボットの状態を監視します。作物の成育状況はドローンが撮った画像で管理し、可変施肥機が作物のポイントごとに肥料をまきます。集落全体をみて一番大変なのは草刈りですが、それはルンバのような機械が自在に走って草を刈る。

 北大の野口伸教授がロボットトラクターの開発を精力的に進めていています。例えば、無人の4台のトラクターが横に並び、協調していっせいに走り出し、旋回して戻ってくる。それを延々とくり返す。こういうことは、技術的にはもう可能になっています。

虫を検知するアグリドローン

AIの基幹技術であるディープラーニング(深層学習)の農業分野への応用の可能性も指摘していますね。

窪田:人工知能がビッグデータとつながることで、いままでできなかったことが、できるようになります。2012年にブレークスルーがあり、子どものように人工知能が学ぶことができるようになりました。これは画期的な技術です。

 佐賀県に非常に面白い取り組みがあって、老舗のIT企業と県、佐賀大が3者連携を組み、IoTやビッグデータを組み合わせて農業の活性化と地方創生につなげようというプロジェクトを進めています。その一環でオリジナルのアグリドローンをつくりました。ディープラーニングの機能を持った初の農業機械です。

 青々と葉っぱが茂る夏の盛りに、ドローンが畑の上を飛んでいきます。葉っぱの裏に虫が潜んでいて、葉っぱをかじると色が薄くなります。何千、何万のそうした画像を撮って色の違いをディープラーニングで学ばせ、虫がいるかどうかを判別できるようにしました。

 アグリドローンが面白いのは、画像を撮るカメラを搭載しているだけではなくて、農薬のタンクを積み、散布のノズルがついていて、虫のいるところを検知し、降下して農薬をピンポイントでまくことができることです。

著書では手違いで操縦士が現場に来れず、アグリドローンの飛行を見ることができなかったとありました。

窪田:じつはその後、もう1回行って、アグリドローンが飛んでいるところを現地で見ました。執念深いもんですから。