日本では有機栽培だから生産コストが高くても仕方ないという考えが一般的なように感じますが、オーガニックの技術に新しいテクノロジーを加えることで、生産性と競争力を高めていました。自分のためのエゴイスティックな農業ではなく、誰のために農業をやっているのかが明確です。オーガニックを求め、食べてくれる人のためです。そのために、できる限り適正なコストで生産し、安定供給しているんです。
グローバリゼーションが必要な理由
驚いたことにこの間、愛知県にある外資系のホールセール店に行ったら、この人が作ったカブを売っていました。ヨーロッパで食べられている赤いカブです。この売り場に行くと、いつも危機感を覚えます。お客さんたちは大きなパッケージの野菜を目をきらきらさせながら買っています。買い物を楽しむその姿に、「国産信仰」の雰囲気は感じられません。
グローバリゼーションは、農業を含め世界で当たり前のように広がっています。オランダの農家はグローバリゼーションを理解しています。一方でローカリゼーションも意識し、地域の人々とつながっています。グローバリゼーションとローカリゼーションを一体のものとして意識しているんです。
国際的なビジネスをしていなくても参加する意味はありますか。
浅井:意味はあります。はっきり言えば、大切な日本人の食を支えるという意味で、安全安心で品質の高い食料が適正な価格で国内で供給され、幸せな食を授かることが、一番幸せなことだと思います。
今はそれができていない。みんな肉が食べたい。でも、牛が食べるエサを輸入せず、日本だけで生産することはできません。だから、グローバリゼーションが必要になるんです。そのことを、消費者も含めてみんなが認識しなければならないと思います。

教科書だけで学んでも、あまり主体性を持てない。実際に経験すると、他人事とは思えなくなり、責任感が生まれます。リーダーシップ教育という意味で、手っ取り早く意識改革につながります。若ければ若いほどいい。正しい考え方を自分なりに感じて、いろんな意見を聞くことで、生の情報を見極める力が磨かれる。「正しい」の定義なんてないですよ。でも、正しい農業のやり方を自分たちなりに導き出すべきなんです。
まとめの答えになりますが、今回たくさん議論してきて、まず知らなければならないと感じました。最適な形は品目ごとに、国ごとによって多様です。知ったうえで、自分の国、自分の地域でどういう農業をしていくかを意思決定し、行動する。まったく知らずに父親のやってきた農業を継いだり、意思決定したりするのは危うい。ガラパゴス化していきます。
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