だから、植物工場は農産物加工などと違って、小さく産んで、少しずつ利益を出しながら規模を大きくしていくという方法をとりにくい。黒字化するには、一定の大きさが必要だ。だが、投資額がかさむ一方、コストが高くて収益性が低いため、フローで利益を出せても、投資を回収するのは簡単ではない。つまり、工場だけで見るなら、財務にとって重い負担になるのだ。

中・外食業界を中心に広がるニーズ

 悩ましいのは、「だからビジネスチャンスはない」と簡単に切り捨てられない点だ。外食チェーンやコンビニ、総菜店など中・外食業界を中心に、安定供給が可能な工場野菜への需要は今や無視できないほど広がりつつある。商機は確実にある。問題はそれにどう応えるかだ。

外食チェーンも工場野菜を使う(牛繁がJA東西しらかわから仕入れたサンチュ)
外食チェーンも工場野菜を使う(牛繁がJA東西しらかわから仕入れたサンチュ)

 今は収益性の低い植物工場だが、そもそも現在の設備や栽培の仕組みが最適なものかどうかはわからない。LEDやタネ、肥料ももっと植物工場に向いているものが作れないかどうか検証が必要だろう。少ないとは言え、黒字化した工場が17%あることは、イノベーションの手がかりになる。

 こうした状況を突破するのは、企業が一部門で手がけるような片手間の参入では難しい。必要なのは、工場を造っておしまいではなく、既存の技術で本当にいいかどうかをゼロベースで考える発想力。そして最も大事なのが、事業をやり抜くトップの意志だろう。それが、黎明期を脱しようとする産業の課題だ。リアリズムに徹しながらも、経営者が夢を抱けなければ、道は開けない。