政府は5月上旬をめどに都市農業振興基本計画を閣議決定する。いまではだいぶ緩んだものの、「都市の田畑はつぶして宅地にする」がずっと日本の土地政策の基本だった。すでに農地の多くが失われてしまったとは言え、政府が都市農業の価値を真正面から評価するようになったのは画期的なことだ。

 では都市農業の意義と制度と実態はどうなっているのか。そんな疑問に答える本『都市農業必携ガイド』(農山漁村文化協会)が出版された。著者はこの連載で紹介したことのある東京都農業会議の松沢龍人さん(2015年4月10日「これはもう革命と言っていいんじゃないだろうか」)、国立市でイベント農場を運営する小野淳さん(同8月28日「ニンジャが畑にやってきた」)、弁護士で公認会計士の本木賢太郎さんの3人だ。

「都市農業」をめぐるすれ違い

 「じつはウィキペディアで都市農業の項目をつくったのはわたしです」。そう話すのは著者のひとりの小野さんだ。スマホでみると、「都市の中で都市と調和しつつ存在する農業を、都市の周辺の近郊農業ととくに区別して都市農業という」という文章で始まり、沿革などを説明した項目がたしかにある。

都市農業の再評価を訴える小野淳さん(東京都国立市)

 かつてテレビ番組の製作会社につとめていた小野さんは、フィリピンで畑の開墾に挑戦する元商社マンを取材したことをきっかけに、農業の世界に転身した。小野さんが運営する国立市の「はたけんぼ」では、ザリガニやカエルを観察したり、野菜の種まきをしたりする学童クラブ、田植えや忍者の技の体験、婚活パーティーなどさまざまなイベントが開かれている。

 小野さんがたんに「農業」ではなく、「都市農業」のことを意識するようになったのは、農地をいかした町づくりのプランをつくる国立市の協議会に2011年に参加したことがきっかけという。参加してわかったのが、農家と市民と行政のあいだでほとんど意見がかみあわないことだった。