言うまでもないが、会合の共通言語は英語だ。前田さんは2000年に就農する直前の1年半、米国に留学した。農業分野で有名なテキサスA&M大学とアイオワ州立大学だ。きっかけは「カウボーイにあこがれていたのと、英語を話せると農業機械の情報を入手しやすくなると考えたから」。大型の機械を使うことが多い北海道の生産者らしい発想だろう。

 もし英語でのコミュニケーションに二の足を踏むようなら、前田さんも単身、ナフィールドの門をたたこうとは思わなかっただろう。そして会合から帰国したいま、「もっと世界的な視野で農業を考える人が日本でも増えてほしい」と強調する。ほかの産業と同様、英語に対してアレルギーがないことが、農業経営の発展に役立つ時代がやってきたわけだ。

交流のチャンス、もっとバックアップを

 付言するが、前田さん自身は今回出会った農業者のように、輸出で売り上げを増やしたいと思っているわけではない。ターゲットは、ほとんど輸入に頼っている日本の小麦市場だ。それでも、海外の農業者が何を狙い、何に悩んでいるかを知ることは、今後の経営を考えるうえで大いに刺激になった。もちろん、前田さんに続く農業者があらわれ、ナフィールドでの体験を生かして国際ビジネスに乗り出す可能性も十分ある。

 今回は前田さんの体験記を中心に紹介したが、最後に一言。国際的な食品企業の資金をバックに世界中の農業者が交流し、見聞を広める。そんなチャンスがあることを日本の生産者に伝え、バックアップすることこそ、農業団体や農政の役割ではないだろうか。貿易自由化に反対することを全否定はしないが、それだけでは「地域」の枠にとどまりがちな日本の農業の限界を突破できない。

 ちなみに、今回は日本企業の支援はなかったため、前田さんは自分で旅費を出して交流会に出席したという。

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