固定資産税の負担が300倍以上に

 問題は、農地と認められないことで、経営的に大きなハンディを負う点にある。税制では地目は大きく「宅地」と「田あるいは畑」「その他(雑種地)」などにわかれる。税負担は地目によって大きな格差があり、宅地は一般的な田んぼと比べ、単位面積当たりの固定資産税の負担が300倍以上になる。ここでいう「宅地」は「建物の敷地」を指し、住宅だけでなく、商店や工場も含まれる。

 固定資産税の税額は「正常な状態で行われる取引価格」、つまり「時価」をもとに決まる。スプレッドの植物工場は亀岡市の山里にあるので、固定資産税の負担は「田んぼの300倍以上」という水準ではないだろうが、周囲の田んぼと比べれば間違いなく重い。

 植物工場はまだ発展途上の技術であり、いくら環境をコントロールしてもなかなか栽培は安定せず、電気代などのコストも高いので、収益性は低い。スプレッドのように黒字化できたのはまだ少数派だ。しかも、同じレタスをつくっていながら、田畑と比べてずっと重い税負担を負っているのだ。

MIRAIの植物工場。この中でレタスが生産されている

 もちろん、農地には食料供給以外の役割もある。先に挙げた食料・農業・農村基本法には、「国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承」を農業生産の価値のひとつとして認めている。いわゆる農業の「多面的機能」だ。

 この点に関していえば、植物工場が貢献できる部分はほとんどない。なにしろ、その気になれば都会のど真ん中にも建設できるからだ。だが、多面的機能がなければ、農業でないとは言えないだろう。実際、農政は条件つきながら植物工場を支援している。

 少し脱線するが、多面的機能はもともと、農産物貿易の自由化交渉を通して前面に出てきた政策概念だ。1993年に決着したガット・ウルグアイ・ラウンドでひとつのピークを迎えた自由化交渉で、日本の立場は基本的に守勢。米国などから輸入枠の撤廃や関税の引き下げを迫られるなか、貿易障壁を守るために理論武装したのが、「農業には食料供給以外の価値がある」という点だった。