
戦略は次のステージに入りつつある。今月中にも着工する京都市の第2工場が、今年12月から来年1月をメドに稼働する。亀岡市の工場と比べて栽培をほぼすべて自動化してコストを下げる。移植も収穫も機械の仕事で、人がやるのは基本的に種まきだけ。1日の生産量は3万株を目指しており、第1工場と合わせると5万株の出荷体制になる。
露地野菜と張り合える値段でFC展開
店頭価格のイメージは200円を割り、約160円が視野に入る。いよいよ露地野菜と張り合える値段に近づく。
ここまでが自社の計画。「10年植物工場をやってきて、拡大するタイミングを見計らってきた」。第2工場の建設はこれまでの延長で、その先に見すえるのが、フランチャイズ方式(FC)による工場の展開だ。「消費者に安全できちんとしたものを提供し、利益を出せないと、『FCでもうかりますよ』とは言えない」。そう言えるメドがたったことを踏まえ、グループ戦略に踏み出す。
そこで、稲田氏にシンプルな質問をしてみた。「露地に負ける要素はありますか」。答えは「ないです」。
農産物のことを、「自然の恵み」と言ったりする。とてもしっくりくる表現だ。農業関係者のなかには、いまも植物工場はうまくいかないと思っている人が少なくない。だが、「マーケット・イン」というビジネスの基本を踏まえることで、植物工場が農業に新たな活路を開く可能性が静かに芽生えつつある。
もちろん、第2工場がうまく稼働するかどうかはこれからの課題だ。亀岡の工場も、環境制御に熟達するために時間がかかった。だが、それを知っていれば、起きうるリスクを想定しながらノウハウを積むことができる。
稲田氏が思い描くのは、FCを広げることで、「2020年までにレタスのシェアの1割をにぎる」ことだ。それが可能だと、取材する立場から言い切ることはできない。だが、スーパーの店頭にごく自然に並んでいるスプレッドの工場野菜を見ていると、革新は起こりえるという気がしてくる。
『コメをやめる勇気』

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