というわけで、稲田氏がもっとも重視したのは値段だ。店頭価格を200円に下げたときはまだ黒字化していなかったが、スーパーで売れない価格で出しても先は見えないと判断した。ここに発想のポイントがある。利益を出すには経費を減らすだけではなく、大量に売って効率を高める必要がある。そのためにはスーパーを通した大量流通に乗せることが必要。だから、スーパーで売れる値段を前提に、計画を組み立てた。

「売ったらおしまい」では伝わらない

 前回触れたように、最初の取材は筆者のほうが無意識のうちに「プロダクト・アウト」の発想に立っていたため、「どうやって利益を出したんですか」といった質問ばかりだった。だが、2回目はトレードグループの一部門という観点を意識して質問すると、生産の工夫についても違った答えが返ってきた。

 「当時は植物工場のレタスは35日で出荷できると聞いていました。ところが、50日育ててやっと、消費者がおいしいと言ってくれるレタスができました。植物が吸った養分がおいしさに変わるには日数が必要なんです」

 いったんそこまで引き延ばしたうえで、栽培日数を42日に縮めることに成功した。50日を基準に考えれば、8日分、生産性が向上したことになる。それより短くしようとすると、「チップバーンが起きて、葉先が黒くなる」。当面はここが効率化の限界という。

 需要の喚起にも努めた。レシピを考えて食べ方を提案したり、社員がスーパーに行って試食販売を手伝ったりした。こういう努力はいまも続く。植物工場の野菜はまだ普及段階の一歩手前。スーパーに売ったらおしまいという感覚では、「生産したばかりの新しいレタスを同じ値段でいつも買える」という価値を消費者にわかってもらえないからだ。

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