「レタスのシェア1割をとりたい」と話す稲田信二氏
「レタスのシェア1割をとりたい」と話す稲田信二氏

 ところが、既存の野菜工場を調べてみてわかったのは、きちんとした野菜ができていないという点だった。「野菜が弱々しいんです。生き生きとしてなくて、力がない。20年間野菜の仕事をしてきたので、見たら状態がわかるんです」。天候に左右されないという点では大きなイノベーションだが、「製品の品質」はあまりよくなかった。

「売れる野菜」の条件とは

 このとき稲田氏は「自分たちなら品質の問題を解決できる」と思ったという。既存の植物工場は大学発のベンチャーや、製造業など異業種からの参入が中心で、当事者が野菜のマーケットを熟知していなかった。これに対し、「自分たちはどういう野菜が売れるかを知っている」という自負があった。

 品質だけでなく、値段にも問題があると気づいた。ある有名な植物工場がつくったレタスを百貨店の店頭に見に行くと、100グラムで360円もした。「これでは難しい」と感じた稲田氏が、「自分で販売できる価格」として想定したのが200~250円だった。

 2008年に亀岡市の工場が本格稼働すると、まず250円程度の店頭価格を念頭に、出荷を始めた。だが、すぐに店頭で200円で売ることができるように、販売価格を引き下げた。「百貨店なら250円でも売れるが、スーパーは無理」と気づいたからだ。

 栽培環境を制御して特定の栄養価を高めたり、農薬を使わなかったりすることをセールスポイントにすることにも限界があると感じたという。「(安全性は)健康に意識のある人や経済的に余裕のある人には訴求ポイントになるが、若い人には響かない」。重要なのはやはり値段だった。

 一部の植物工場と違い、「無菌」を強調することもやめた。当初は「洗わなくてもいい」とアピールしていたが、「根拠があいまいで、これはダメだ」と思い、やめたという。「出荷するまではクリーン」だが、いくらコールドチェーンで運んでも、消費者が開封して放っておけば、当然菌は増える。販売するスーパーなどの管理にも影響される。

 同じ観点から、店頭で平台に山積みにはせず、冷蔵棚で販売するよう売り先に求めた。だが、一部の売り先は「いままでの売り場に置けなくなる」「特売をやりにくくなる」と反発し、離れていった。「販売量で上から2番目の相手だったので、けっこうインパクトがあった」が、方針は曲げなかった。だから、「洗わずにすみ、日持ちがする」とうたっている同業を「言語道断」と批判する。

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