1点目に関して言えば、農家から言われるまでもなく、福永氏がみずから語ってくれた。「雑草には苦労した。初めてなので作業が間に合わなくなり、あぜに雑草が生えてしまった」。念のために確認しておくと、この取材は農家から筆者に批判がとどく前のものだ。
予想を超えた雑草の成長ペース
1年目にもかかわらず、面積は日本の平均の10倍の20ヘクタール。夏場に雑草の生えるペースは想像を超えていた。全部を刈りきれないうち、刈ったところからまた生えてきた。そのうち近くの農家から市に連絡が入り、市からイオン農場に電話が入った。
「すみません」。現場からそう連絡された福永氏は「草刈りするぞ」と号令し、本社のスタッフを動員して現地に向かった。経理担当者まで田んぼに行った。どこまで刈るべきか分からずに隣の田んぼまで一気にきれいにし、「うちのも刈ってくれた。そこまで期待してなかったのに」と感謝された。
福永氏は「農業は地域とともにやっていかなければならない。地域の活性化に貢献できないと、気持ちよく仕事できない」とくり返す。野菜ではすでに各地で農場を展開しており、地域に溶け込むことがいかに大切かを熟知している。いきなり20ヘクタールで若干の混乱はあったかもしれないが、2年目から気をつければ解消できる問題だろう。
むしろ、考え込んでしまうのは2点目だ。「サラリーマン的な働き方」とは何か。例えば、定時に出勤し、定時に帰る。帰らずに仕事を続ければ残業になる。もちろん、会社勤めでも「サービス残業」といったものは往々にしてあるが、農業の場合、勤務時間を到底管理できないほど仕事が不規則で長引くことがある。
「それが本来あるべき働き方なんだろうか」。福永氏は常々、農業の世界で当たり前と言われてきた働き方をなんとかできないかと考えてきた。「植物は生き物」という考え方を優先するあまり、無理な働き方を強いていないだろうか。農業は労働基準法で「労働時間」「休憩」「休日」が適用除外になっている。だがそれを当然としていて、若い人が農業に入ってくるだろうか。

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