店頭に並んだイオンのコメ=写真はイオンアグリ創造提供
店頭に並んだイオンのコメ=写真はイオンアグリ創造提供

 だからと言って、「やっぱり企業がやればうまくいく」と短絡するつもりはない。ある程度まとまった面積があり、企業的な管理をすれば赤字は回避できるのだろうが、企業にとって収益部門になれるかどうかは今後の課題だ。そこで、ここからはあえて同社が気づいた課題に注目したい。

赤字補てんより、「水」「集積」に注力

 福永氏がまず感じたのは、「水の問題」だ。地域のインフラである用水路の一部がコンクリートではなくて土のままになっており、予定していた時期にスムーズに田んぼに水が流れてこなかった。従業員を遊ばせておかず、畑との間で計画的に作業を平準化しようと思うと、これはけっこうな障害になる。

 問題を解決するため、羽生市は用水路の整備を進める予定という。田んぼ1枚の面積を広げることも計画中だ。この補助金の使い方はオーケーだろう。どうせ税金を使うなら、農家の赤字を毎年埋めるようなやり方ではなく、利益が出やすくなるように環境を整備するほうがよほどましではないだろうか。

 その関連で言えば、農地の集積も今後の課題だ。イオンアグリ創造の田んぼは現在、約20ヘクタールあり、半径500メートルほどの中で3カ所に散らばっている。長い時間をかけて田んぼを集めてきた既存の農家と比べると、行政のバックアップで一気に農地を借りたために分散は軽微だが、理想は1カ所への集約だ。これも市の支援で、3年ほどで実現する計画という。

 ここで、地元の農家から筆者に寄せられたイオン批判に触れておきたい。1つは「雑草の管理をきちんとやらなかった」。田んぼを貸している側(この農家はイオンの田んぼの地主ではないが)からすれば、田んぼを粗末に扱われたと感じたのだろう。もう1つは「サラリーマン的な働き方をしている」だ。どちらの声も地元の総意ではないが、イオンがチャレンジしていることの意義を考えるため、あえて取り上げてみたい。

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