以上はたんなる構想ではない。急激に拡大する事業を支えるため、パートナー企業を集めてコンソーシアム型の運営体制も構築する。具体的には、植物工場を運営する子会社のバイテックベジタブルファクトリー(東京都品川区)が第三者割当増資を実施し、キヤノン電子や設備工事大手の菱熱工業、日本政策投資銀行などが資本参加する。バイテックベジタブルファクトリーは当面の事業拡大に備えて資本を厚くするとともに、将来的には株式の上場も視野に入れている。

業務用レタス市場の1割を

 ではバイテックは工場の生産規模を一気に拡大することで、どんなマーケットを押さえようとしているのか。答えは業務用。コンビニやスーパーなどで販売するサンドイッチや総菜の材料、カット野菜、さらに外食チェーンのメニューで使うサラダなどだ。スーパーの野菜売り場はたとえレタスが品薄でも成り立つが、外食のメニューやサンドイッチに使うレタスは欠品が許されず、しかもスーパーの店頭と違い、簡単に値上げすることはできない。

 そうした企業がもっとも求めているのは、仕入れの安定。度重なる天候不順を背景に、工場野菜の需要が急激に増えつつある。しかも、露地で作った野菜と違い、工場野菜は土がついておらず、菌数も限りなく少ないので、厨房や作業場で洗わずにすむことも多い。生産の安定による価格の平準化と、作業の軽減を合わせれば、工場野菜に値ごろ感が出る。バイテックは工場の自動化を進めることでコストを押し下げ、価格競争力を一段と高めようとする。

 目指すシェアは、業務用レタスの市場の10%。1割のシェアを獲得することに成功すれば、マーケットへの影響力を確実なものにする道筋ができる。ニッチな野菜や果物を除けば、日本の一般的な農産物のほとんどは大勢の小規模農家に支えられてきた。そこに、ようやく「企業」と呼べる規模のプレーヤーが現れるわけだ。

 農家が家業から企業経営へと脱皮し、法人化することの意義は昔も今も小さくない。だがバイテックの登場により、彼らのチャレンジとは違う次元の農業ビジネスが誕生する兆しが見えてきた。そのことは、植物工場だけでなく、農業全体にも影響を及ぼす可能性を視野に入れる必要がある。さらに言えば、バイテックは植物工場のフランチャイズ展開に際し、企業だけでなく、地元の農協や農業法人をパートナーにすることも念頭に置いている。最先端の技術を使った地域の農業の活性化だ。

LEDの光が照らす七尾工場の栽培棚(写真提供:バイテック、石川県七尾市)