減反を廃止すると何が起きるでしょうか。

 「2010年ごろに東北や新潟などの稲作地帯で聞くと、当時はまだ生産余力があったので、『いまは我慢して減反に協力している。もし減反をやめれば、コメは増産になる』という声が多かった。だが米価が下がった2014年に聞くと、『これだけ下がると減反をやめても増産にならない』という声がずいぶん増えていた」

 「減反をやめても米価は下がらないとは言わないが、廃止に伴うコメの増産圧力はだいぶ和らいだ。だが米価が戻ってくれば、減反廃止後の増産のエネルギーが高まる。自分はそのことを恐れている。農水省や自民党の議員は米価がまったく下がらないことをソフトランディングと考えているのかもしれないが、自分は多少米価が下がっても耐えられるように競争力を強めることがソフトランディングだと思っている。これは議論の分かれるところだ」

 「シミュレーションの結果によると、米価が低い状態で減反を廃止すれば、それほど大きく米価は下がらない。反対に米価が上がった状態で廃止すれば、米価ががくんと下がる可能性が大きい。米価が高いともうかるので、みんな主食のコメをつくろうとするからだ。だれが考えてもそうなる」

 「もしそれを防ごうとすれば、飼料米などへの補助金をもっと増やすしかない。高い米価に見合う補助金が必要になるからだ。そんなことができるわけはない。財務省が反対するだけでなく、国民も怒るだろう。農水省も悩んでいるのではないか」

もう農水省のかけ声に乗らない

それでも、今年も飼料米へのシフトを強めようとしています。

 「そもそも、農家はみずからの判断で飼料米の生産を増やしたのだろうか。法人経営をしっかりやっている人は、自分で判断していると思う。だが、そうでない農家のほうが多いのではないか。彼らは、農水省と農協と市町村が鳴らす鐘や太鼓に背中を押されて飼料米をつくっているのが実情だと思う。そういう運動論でやっていると、タガが外れたときの反動が大きい。減反廃止後は、もう農水省のかけ声に乗らないかもしれない」

現場のヒアリングを徹底しているから指摘に説得力がある