作業中はずっと音楽を流している。(東京都八王子市)

 農業一色にみえる作業小屋だが、プリンターの上の棚をみると、農業とはあまり関係のないものが載せてあった。レコードプレーヤーだ。そのことを指摘すると、続橋さんが段ボール箱からレコードを取り出し、音楽を流し始めた。ブラームスの交響曲第一番ハ短調だ。「指揮はブルーノ・ワルターです」。

ブラームスと木村カエラと

 小屋に運び込んだレコードはシングルを含めて約100枚。壁にかけたスピーカーは水野さんが提供した。「マンションに住んでたら、大きな音は出せないですから。若いころ、30年前に買って押し入れに入れといたものです」。しばらくすると、スピーカーをインターネットにつなぎ、木村カエラの「リルラリルハ」をかけた。このあたりは、いまの50代のウイングの広さだろう。

 作業中はずっと音楽をかけっぱなしだという。反対側の壁にはテレビもかかっている。「自分たちの自由な城です」「もう大人の秘密基地ですよ」。会社を辞めるとき、「組織はもういいや」と思った。そこで実現を目指した開放感は、こういう形で実現していた。

 話をもとに戻そう。会社を立ち上げてから1年あまりが過ぎた。肝心の農業はうまく行っているのだろうか。

 「自分たちで、自嘲の意味を込めて『後手後手農業』って呼んでます」

 いくら研修を積み、周到にシナリオを描いても、作物の栽培が1年目からすぐうまくいくわけではない。次回は、1年目の栽培の苦労と、将来のビジョンを伝えたい。それは超高齢化社会に突入しようとしている日本の未来像を考える手がかりにもなると思っている。

新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売

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