以上が、日航が越後ファームのコメを採用するまでの経緯だ。全国に農家は200万戸以上あり、ほとんどがコメをつくっている。ではなぜ、10年前にコメづくりを始めた近正氏やそのスタッフが、既存の農家を超える成果をあげることができるのか。日航は今回の経緯をふり返り、「おいしいご飯の炊き方を見つけるため、熱心に何度も立ち会ってくれた」(開発部)と評価する。

保管、売り方、炊き方まで努力を

 おそらく、越後ファームよりも味のいいコメをつくる農家はたくさんいるだろう。だが、コメのつくり方から保管の仕方、売り方、炊き方までこだわり、一気通貫で努力する生産者はそう多くはない。その努力の差が、気がつけば今回のような飛躍をもたらす。

 ちなみに、営業面で言えば、いかにコメの味を評価し、高く買ってくれる先を見つけるかが焦点になる。近正氏によると、「有名な高級料理店でも、驚くほどコメにこだわりのないところが多い」という。優先するのは値段の安さだ。シェフが自分の店でどんなコメを使っているかを知らなかった例さえある。

 その意味で、黒木氏との出会いは近正氏にとって貴重な財産となった。日航の採用に前後して、黒木氏が東京・湯島で経営する和食店「くろぎ」が越後ファームのコメを使い始めたのだ。

 10年かけてぶれずに努力し続ければ、多くのコメ農家が想像もしなかった地点へとたどり着くことができる。近正氏の挑戦は既存の農家も、これから新たに稲作を始める人も、勇気づけてくれるのではないだろうか。

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