話がいったん脇道にそれるが、機内食のイメージの変遷にふれておきたい。1954年に「羽田-サンフランシスコ便」が就航したころ、機内食はサンドイッチだけだったが、それでも十分に高級感があった。ところがエコノミークラスが中心の大量輸送時代に入り、国内でおいしい洋食をふつうに食べられるようになると、機内食のステータスは徐々に低下。90年代にバブル経済が崩壊し、コスト削減時代になると機内食の質はさらに落ちていった。

「空の上のレストラン」機内食の復権狙う

 そしていまや航空業界は、格安航空会社(LCC)が台頭し、競争が一段と厳しさを増している。こうしたなか、日航は安値戦略と一線を画すため、2013年から「空の上のレストラン」をコンセプトに有名な料理家などと共同で機内食の開発に着手。黒木氏の監修による和食の一新もその一環で、成田空港と羽田空港から出発し、ニューヨークやロンドン、シンガポールなどに向かう便で3月から提供し始めた。今後順次、対象となる路線を増やしていく。

 日航が越後ファームを選んだ理由のひとつに、コメの水分値を一年中、新米と同じ状態に保つことのできる独自の貯蔵方法がある。それを可能にしたのが、越後ファームが2014年に阿賀町に建てたコメの貯蔵・加工施設の「雪室(ゆきむろ)」だ。

 日本ではふつうコメを脱穀し、かさばらない玄米にして保管する。これに対し、同社はモミのまま貯蔵して出荷に合わせてモミがらを外し、精米するために鮮度が落ちにくい。しかも、サーモスタット制御の電気冷蔵庫は温度が上下に振幅するのに対し、雪の保冷効果を利用する雪室は温度にムラがなく、室内の乾燥を防ぐこともできる。日航は今回、ほかのいくつかのコメも選考の対象にしたが、食味と品質管理で越後ファームの優位が際立った。

雪の保冷効果で新米の品質を保つ「雪室」(新潟県阿賀町)