そこで、山田氏が農家に申請を勧めているのが、独立行政法人の農畜産業振興機構が提供している「契約野菜収入確保モデル事業」だ。相場が急騰したとき、一定の基準価格と市場価格の差額を補てんする仕組み。原資は農家の積立金と公的資金だ。

 「どうせ補助金をもらうなら、ネギをたくさん生産してもらう方向に持っていきたい」。山田氏はそう話す。

打てる手を、打て

 ここまでが、こと京都グループが進めている安定供給への取り組みだ。そこで冒頭に戻ると、山田氏がもっとも強調したのは、業界全体の取り組みが欠けている点だった。「天候のせいでダメだったってみんな言ってるけど、それって逃げじゃないですか」。そんな思いから、農林水産省とのパイプを使い、「もっと大がかりに安定供給の仕組みを考えよう」と呼びかけているという。

 そう書くと、疑問に思う読者もいるかもしれない。「こと京都グループは安定供給への仕組みを着々とつくりつつある。ライバルが努力を怠っている状態のほうが、優位性を保てるではないか」と。何のためにライバルを利することを国に提案するのか不思議に思う人もいるだろう。

 だが、山田氏にとって「ライバル」はそうした意味ではない。「だって今回、野菜が高騰したことで、輸入が増えたじゃないですか。結局、自分たちの首を絞めてるんですよ。やっぱり日本はダメだねってことになって、輸入が増えるんです」。一番危惧しているのは、「国産は不安定なので、輸入物で代替しよう」という風潮が強まることなのだ。

 山田氏が描く成長戦略は、日本人の国産志向が強い追い風になっている。それが揺らげば、安い外国産とのガチンコの勝負になり、シナリオの修正を迫られかねない。こうした問題意識を、国や業界はもっと共有すべきだろう。冒頭の問いかけに戻れば、農業が天候の影響を完全に排除するのは難しいだろうが、打てる手はまだたくさんあるはずだ。

新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売

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  • なるほどなぁ~と思う所がたくさんある記事です。
    野菜や果物は季節商品ですから年間を通じて同じ値段というのは無理だと思いますが、去年の値段はべらぼうなものだと感じました。
    冬場のキュウリが高いのは解るが1本80円は無いだろ!と言うのが正直な感覚です。
    日本の食べ物は海外と比較して飛び抜けて美味です。
    にも拘わらず農水省は何をしているのか?と言う部分が散見されます。
    と言って農家が不当な利益を得ている様にも思えません。
    何か国のシステムが実情とずれている感じがします。


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