農業はいつまでたっても天候に左右されてしまうのだろうか。昨年の長雨と台風で野菜の値段が高騰し、「1個1000円を超すレタス」など、消費者はスーパーで驚くほど高値の野菜を目の当たりにした。ところが、そんななかでもきっちりいつも通りの値段で出荷していた生産社グループがある。

「まだ、しんどい」

 京都を中心に、ネギの生産と集荷、販売を手がける「こと京都」(京都市)グループはそのひとつだ。同社はどうやって天候不順に立ち向かい、影響を防いだのか。山田敏之社長にそう聞くと、開口一番答えたのは、自社ではなく、日本の農業界全体のことだった。

安定供給の強化を目指す山田敏之氏。(2016年7月に京都で開いた15周年記念パーティー)

 「みんながみんな本当に安定供給しようと思ってますか。もちろん、みんなちゃんとつくりたいとは思っている。でも、だから勉強して、違う手を打ったりしてるでしょうか」

 山田氏がそう指摘する背景に、いまも農業界に根強く残る独特の感覚がある。例えば、天候不順で多くの農家が失敗するなか、たまたま自分だけうまくいくと大もうけができる。相場が急騰するからだ。そして、「たまにはこういうことがないと」と喜んだりする。そういう体質について山田氏は「この業界はまだしんどいなあ」と感じるという。

 ここで、こと京都グループについて説明しておこう。グループは大きく2つに分かれる。1つは、京都で九条ネギを生産しているグループで、本体のこと京都と、同社と契約している京都の農家たちが生産を担っている。もう1つは、2014年に設立した「こと日本」(東京・千代田)のグループで、京都以外のネギの生産者と契約している。

 グループ全体のネギの生産量は年間で約1900トン。そのうち約8割は外食チェーンなどの業務用で、こと京都でネギをカットして出荷したり、売り先がみずからカットしたりして使っている。残りは、袋詰めしたネギを店頭で売るスーパーなどへの販売だ。

 結論から言うと、メーンの販売ルートである業務用のネギはいっさい欠品しなかった。しかも、市場価格が高騰しているにもかかわらず、もともと契約していた通りの値段で納入した。相手が困っているとき、ニーズに応えれば信頼が高まり、取引関係はより強固になる。

 「ビジネスの鉄則」と言いたいところだが、それがなかなか通用しないのが、農業界の難しい点だ。いまも「相場で勝負する」という感覚の生産者が少なくないからだ。彼らのなかには、相場が上がると取引先との約束を破り、市場に出荷する人さえいる。これに対し、こと京都グループは「約束を守る」ことに徹することで、事業を拡大してきた。