ところで、と暗い気持ちでふと思う。国の農業政策のことだ。農水省は昨年、米価の下落を防ぐため、大量の補助金をつぎこんで主食のコメを家畜のエサに回した。それが功を奏して若干だが米価は上がったが、その結果何が起きたか。消費の減退だ。農水省みずから2015年産米の消費は当初の見込みより減ると予想している。
ビジネスの鉄則を踏み外さない
いったいなにが政策の目的なのか。高い関税を外国米にかけて国内のコメを守り、補助金を使って主食米の量を減らし、値段が上がってさらに需要が減る。消費者は税金とコメの購入費で二重の負担を負う。こんな政策の行き着く先に、どんな稲作の未来を展望しているのだろう。
ちなみに、「おむすび権米衛」の経営については質を追求する厳格さを強調したが、取材の場面は笑いのたえないものだった。自分たちがやっていることを素朴に素直に肯定できているからだろう。農家からコメを高く買い、おいしいおむすびを追求し、消費者に安く売る。ビジネスの鉄則を踏み外さずに、農地と農業を守る。理想がシンプルだから、努力の方向にぶれが生じないのだと思う。
『コメをやめる勇気』

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。
日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売
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