コメの最強ブランド、新潟県魚沼地区のコシヒカリが食味ランキングで特Aから転落した。28年間守り続けた特Aのランクを失ったことに産地は衝撃を受け、「来年は必ず特Aを奪還する」と意気込む。魚沼コシにとって特Aが「不動の地位」であることがブランドの価値、ひいては高い米価を支えてきた以上、当然のことと言えるだろう。

 では、特Aとはいったい何なのか。ランキングはどうやって決まっているのか。今回はコメのおいしさについて考えてみたい。

コシヒカリと食べ比べ

 コメの食味ランキングは、財団法人の日本穀物検定協会(東京都中央区)が公益事業として実施し、毎年2月に結果を発表している。2017年産の場合、同11月から今年の2月までが検査期間になった。

 食味検査は、協会が選抜した「エキスパートパネル」と呼ぶ評価員たちが実際にサンプルのコメを食べて実施する。検査項目は「外観」「香り」「味」「粘り」「硬さ」「総合評価」の6つ。基準米となるコシヒカリのブレンドと食べ比べ、「0」をはさんでプラスマイナスそれぞれ3の7段階で評価する。

 外観はツヤや白さなどを判定する。では香りはどんな尺度で判定するのか。結論から言うと、香り米のように独特の強い香りがあるものは高い評価を得にくい。コシヒカリが基準になっているからだ。粘りのチェックでは、あまり粘りのないものは評価されにくい。コシヒカリの特徴が、粘りの強さにあるからだ。味は「いわゆるご飯の味」がするかどうかが評価ポイントで、甘みが関係する。硬さはどちらかというと、硬いものが評価されやすい。

 以上からわかるように、機械で測るような検査と違い、エキスパートパネルの味覚が頼りの極めて繊細な検査だ。そして、ランキングを決めるのは最後の総合評価。他の5つの項目はサンプルのコメの特徴を見極めるためのもので、その個々の結果とは切り離し、総合的な判定を下す。

 ランキングは「特A」「A」「A’」「B」「B’」の5段階。サンプルは「産地・品種」が単位で、例えば「秋田県北のあきたこまち」と「秋田中央のあきたこまち」は別サンプルになる。2017年産で評価対象になったのは151の産地・品種。そのうち43の産地・品種が特Aの判定を受けたが、魚沼産コシヒカリは「定位置」にはなく、1つ下のAにランキングされていた。

コメの食味試験の様子(写真は日本穀物検定協会提供)
コメの食味試験の様子(写真は日本穀物検定協会提供)

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