稼働を一時停止する直前のベジポート。農産物はほとんどない(千葉県旭市)

 ニチレイが、千葉県で手がけていた6次産業化事業から撤退した。野菜を低温貯蔵し、加工する設備をそなえた大規模施設を旭市で運営していたが、2月いっぱいで稼働を停止した。「日本農業の再生への貢献」という理想を掲げたプロジェクトは、ひっそりと幕を下ろした。

「相場の変動」対策、合理的にみえたが…

 6次産業は、1次産業である農業と2次、3次産業を組み合わせることで、農業の収益性を高めることを指す。今回の事業では、ニチレイグループの中核企業であるニチレイフーズと農業法人のテンアップファーム(千葉県富里市)が組み、2007年に「ベジポート」という事業組合を設立、2009年から施設を稼働させていた。

 投資額は約10億円。ニチレイが4億5000万円、テンアップファームが5000万円を出したほか、約4億円の補助金も活用するなど、政府のバックアップも受けたプロジェクトだった。だが稼働から7年間、一度も利益を出すことができず、ニチレイは事業を続けることをあきらめた。

 計画そのものは、じつに合理的にみえた。もともとテンアップファームは自社生産だけでなく、周辺の農家からニンジンやトマト、ホウレンソウなどの野菜を仕入れ、販売していた。悩みは相場の変動。「豊作貧乏」という言葉がある通り、野菜が余ると値が下がるのは農家に共通の頭痛のタネで、出荷しても利益が出ない分は畑に捨てたりしていた。貯蔵施設で出荷を平準化すれば、こうした問題を軽減できると考えた。

 じつは「相場の変動」にあらがおうとしたベジポートこそがこの問題に悩まされ、事業を根底から揺さぶられることになるのだが、そこのことは後述する。

 話をもとに戻そう。ベジポートをつくる前も、テンアップファームはまったく無策だったわけではない。例えば、余ったトマトを廃棄せず、工場に委託してジュースにしたりしていた。だが、「捨てないですんだ」というていどの対応策にすぎず、利益は出ていなかった。そこで、ベジポートではジュースをつくる機械を買い入れ、自ら加工も手がけることにした。典型的な6次産業化の事業と言っていいだろう。