原則は「複合的な生産」

 英国の植物病理学者、アルバート・ハワード(1973~1947)は有機農業のバイブルとなった主著「農業聖典」に次のように記している。

 「複合的な生産が原則である。つまり、植物は常に動物とともにあり、多様な植物と動物が共生している。森林には、ほ乳類からもっとも単純な無脊椎動物まで、あらゆる動物が存在する。植物界にも同様の生態的な広がりが見られる。単一での生産が行われることは絶対になく、複合的な生産がその原則である」(保田茂監訳、日本有機農業研究会)

 ハワードがここで強調した「複合的」という要素には、「多様性」の意味が込められていると考えてもいいだろう。農薬と化学肥料に頼り、単一の作物を大規模に生産する農業と違い、有機農業には本来、多様なあり方を認める発想がある。ところが、自然農法や有機栽培を営む日本の農業界の一部には、少しの違いで他者を批判する空気がある。

生産者とのつながりの強さが大地を守る会の強み(写真提供:大地を守る会)

 藤田さんは「私は学生運動世代。私が社長である限り、どこかにごつごつしたものが出る」と話す。軽くてオシャレなノリに染まりきれない硬派の姿勢が残るという意味だ。だがその一方で、多様な価値観、方法を認めない限り、有機農業が欧米のような広がりを持つことはできないとも強調した。

 じつはこの発想こそ、統合の際にもっとも必要とされるものだろう。経営スタイルも歴史も違う両社には文化の大きな違いがある。統合交渉ではその違いが際立つこともあるだろう。当然のことながら、「なあなあ」で交渉が成り立つわけではない。

 そのうえで互いの強みを尊重し、企業文化を理解し合うことが統合を成功に導くカギとなるだろう。安全でおいしい農産物の生産を支援し、食卓にとどけるという目標を共有する2つのブランドがさらに成長することで、豊かで多様な食と農の実現に貢献することを期待したい。

新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

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