有機農業の世界は狭い世界で批判し合う傾向がありませんか。肥料を一切使わない自然農法の農家には有機農業まで批判する人がいます。

 「日本社会にはオーガニックの統一した基準が根付いていません。そのために安全性を競い合って、完全無農薬のものがよくて、ちょっとでも農薬をまいたらレベルが低いという発想になります。かつての学生運動にも同じ傾向がありましたが、本当に問題なものは外側にたくさんあるのに、すぐそばにいて少しだけ違う人を『あなたたちがいるために、私たちの純粋さを守り切れない』と批判します」

 「有機農業にも『自分たちは純粋にいいことをやっている』と考える傾向があり、ついそういう方向に流れてしまって、多様性を認めることができない構造になってしまったんです。有機農業まで批判する運動をやっている人は、本当に純粋に守り切ってやっていますか。なんだかんだ言って、コンビニでおにぎりを買ったり、あまり気にせず外食したりしていませんか」

 「自分には許していることがいっぱいあるのに、相手のことは許さないという人がいるのは、日本の市民運動や有機農業運動の欠陥ではないかと思っています。もっとおおらかに多様なものを認めないと、広がりを持てません」

特別栽培まで広げてもいいのでは

オーガニックの基準をどう考えるべきでしょう。

 「無農薬、無化学肥料を3年間続けないと認証しないJAS有機の表示制度は、農家にはまったく魅力はありません。新たに有機農業を始める人は、その間、価格面で評価されず、売り先の確保も期待できません。私の実感ですが、有機農業を(農薬と化学肥料の使用量を半分に減らす)特別栽培まで広げてもいいのではないかと思っています」

 「日本は欧米と違い、高温多湿なために植生が豊かですが、雑草が次々に出てきてしまうという難しさもあります。欧米とはまったく環境が違うんです。にもかかわらず、完全無農薬を求めれば、やれる人はいいですが、全体をどうするかを考えればもっと広い基準が必要でしょう。大地を守る会は独自の厳しい基準でやりますが、ほかは認めないというのではよくありません」

 「病害虫の防ぎ方など、有機農業の技術はかつてと比べてずいぶん進歩しています。新規就農で有機農業を選ぶ人もいます。ただし、彼らは目立ちますが、数はそう多くはありません。基準の面から、農水省がもっと後押しすることはあるはずです。そして我々のような販売業者や消費者の組織がもっと広がりを持ち、力をつけないと、農家の努力だけでは広がりはつくれません」