統合の背景は何ですか。

 「有機農業の田畑を広げ、生産者を増やしたいという思いで40年やってきたのに、なかなか思うように広げることができませんでした。アメリカやヨーロッパはオーガニックの市場が1兆~3兆円ありますが、日本は大ざっぱに言って1000億~1300億円しかありません。我々単独では広げることができない状態が続いていたんです。いつまでもニッチの世界にとどまっていることに対し、私たちの責任もあります」

 「安全なものをつくる生産者とそれを支える消費者だけが狭い世界でつながっていればいいという考え方もあるかもしれませんが、私はもうちょっと外の世界に広がっていくべきだと思っていました。そういうことを話していたら、高島さんも『そうですね』って応じてくれて、一緒にやれるんじゃないかという話になりました」

「提携」の誇りと「原理主義」の呪縛

なぜ欧米のような広がりを持てないのでしょう。

 「日本の有機農業の発展の経緯をふり返ると、大地を守る会がスタートした40年ほど前から、『生産者と消費者の提携』ということが盛んに言われ始めました。提携という言葉は世界に広まっている誇るべき言葉です。ただし、提携はお互いの信頼があって初めて成り立つものなので、広がりをつくるのが難しいんです」

 「スーパーや百貨店とは違うところで、有機農産物が流通するようになりました。熱心な消費者ほど提携という考え方が強く、一般市場に広がる力が弱かったんです。そういうDNAが日本の有機農業に植えつけられている。我々は一貫して『ビジネスの手法で社会を変えよう』と言ってきました。当初から株式会社というのは相当異端にみられました」

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