一方、ベジタベには独自のブランド価値がある。「日本人が作っている野菜」への安心感だ。佐々木氏によると、「日本の農業は進んでいて、日本の野菜は安全というイメージがある」。日本人がやっていることによるブランド力を過大に評価すべきではないだろうが、ここまではうまく経営にプラスに働いてきたと見てもいいだろう。

必ず農場に来てもらう

 取引をする際は、必ずバイヤーに農場に来てもらい、どうやって野菜を作っているかを自分の目で確認してもらう。バイヤーにその場で野菜をつまんで食べてもらったり、収穫イベントを開いたりすることは、スタッフが「下手なこと」をしないようにするための抑制効果の役割もある。

ホウレンソウ畑(上海市奉賢区)
ホウレンソウ畑(上海市奉賢区)
茎が折れていたり、変色したりしているベビーリーフをはじく作業(上海市奉賢区)
茎が折れていたり、変色したりしているベビーリーフをはじく作業(上海市奉賢区)

 パートを含めると、会社は70人以上の大所帯。しかも、佐々木氏を除くと、ほぼすべて中国人だ。日本人の駐在員やその家族が大勢いる上海の中心部にはあえて住まず、農場に近い郊外に暮らしている。中国で農業にどっぷりつかり、奮闘している佐々木氏に「独学で始めてよくこんなに野菜を作れるようになりましたね」と話すと、「まだまだですよ」と言って笑った。

「バイヤーが農場に来る店としか取引しない」と話す佐々木祐輔氏(上海市奉賢区)
「バイヤーが農場に来る店としか取引しない」と話す佐々木祐輔氏(上海市奉賢区)

 今回はここまで。日本の農業の未来といったマクロの問題を扱うのと違い、中国という新天地で伸び伸びと農業に励む佐々木氏の取り組みに、回りくどい解釈は必要ないだろう。思い切って身を投じれば、日本の農業が海外で真価を発揮できるチャンスはある。非農家の佐々木氏がその可能性を示したことを、素直に評価すべきだろう。

新たな農の生きる道とは 『コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売