全農は変われますか。

戸井:営業開発部のメンバーはいろいろ大変だと思うが、今までつき合いのない実需の人を紹介していきたい。すぐうまくいかなくてもいいと思う。こういう世界があるということを知ってもらえれば、最初は小さな動きで失敗するかもしれないが、次のステップにつながる。いろんな失敗をすればいい。

 全農にチャンスはある。これまでのままでは、もったいないと思う。そのことをどう全農の人たちが感じてくれるだろうか。

営業開発部のドアは開けたままですか。

戸井:そう。僕はこのフロアが1つのお店になればいいと思っている。お店はフリーに入れる。鏡も置いた。身だしなみとか、小さいことだが、意識を変えないときちんとお客さんに接することはできない。電話は3コール以内に出て、自分の名前を伝える。お客さんが来たらあいさつする。

 部には3つの課がある。メンバーは毎朝来ると、長机の好きな場所に座る。課で分けると仕事が縦割りになる。横にいる人間は意識するが、違う課の人間は別世界になってしまう。共同で使う長机は長方形ではなく、斜めの形のものにした。みんながお互いに顔を見れるようにするためだ。

 ただし、本来スタッフがここに座るのが目的ではない。外に出ることが目的。ここに居続けてもらっては困る。

気軽に入れるように営業開発部のドアは開け放した(東京・内神田のコープビル)
気軽に入れるように営業開発部のドアは開け放した(東京・内神田のコープビル)
斜めに曲がっている営業開発部の机。座る場所は自由(東京・内神田のコープビル)
斜めに曲がっている営業開発部の机。座る場所は自由(東京・内神田のコープビル)

「求められる全農」に

 全農の販売担当がこれまでスーパーや外食チェーンと接触がなかったわけではない。だが、食材ごとの連携は少なく、系列の販売会社にモノを流すのがメーンの仕事だった。極端な表現をすれば、生き馬の目を抜く他業界のアグレッシブな営業の世界と比べ、「引きこもり」の状態にあった。

 「初めてこんな人に会いました」というスタッフの反応はそれを象徴する。戸井氏が変えようとしているのは、そうしたモノを右から左に流すだけの販売体質だ。取材で「流通企業を新たに作ろうとしているように見える」と指摘すると、戸井氏は笑ったが、まさにそう実感しているのだろう。

 言うまでもなく、小泉氏は全農の力を強め、全農に利するために改革を促したわけではない。全農のコメの集荷率が低下し続けていることが示すように、全農が頼りないと見れば、農協は直販を増やす。「農産物流通を牛耳る全農」というのは一部の偏ったイメージで、放っておけば影響力はさらに低下するだろう。それを防ぐには「求められる全農」になる以外に手はなく、全農改革の目的は農業の活性化に貢献することにある。

商談用のスペース。入館証なしで入ることができる(東京・内神田のコープビル)
商談用のスペース。入館証なしで入ることができる(東京・内神田のコープビル)
新たな農の生きる道とは 『コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売