このままではやる気のある農協は全農から離れ、そうでない農協ばかり全農に集うことになったりしませんか。

戸井:極論すると、そう見えるかもしれないが、実際にはそうではない。だが、ただまとまったものを売るというこれまでのやり方は変えていかなければならない。そして、全農が経済事業を担い、「きちっと売ってくれる」と思ってもらえれば、農協は全農に頼ってくる。マーケットインって言葉で言うだけではなくて、「実需が望んでることは何か」を考えると、おのずと「大根を一律の価格で供給する」という世界ではなくなってくる。

 今やろうとしているのは、「できるだけ相手と会って話そう」ということ。電話での交渉では何も出てこない。メールでもダメ。

 イトーヨーカ堂は他のスーパーと店舗では競合しているが、同業として同じ悩みを持っているので、彼らと会うことに何の抵抗もない。そういうところにメンバーを連れて行って名刺交換をさせると、「初めてこんな人と会いました」とびっくりされる。

 例えば、今までは課長クラスとかしか会っていなかった。それではダメで、「もっとキーマンに会うように」と言っている。課長では方針を決めることはできない。決定権がある人と会わないと、方針は出てこない。

「まず聞きなさい」

上の人に会うにしても、提案力がないと難しいのでは。

戸井:最初の接触では「まず相手の言うことを聞きなさい」と言っている。そして、「広くて浅い」でいいから、自分たちのリソース、情報をすべて覚える。相手が何か言ったとき、「持ち帰って考えます」なんて言わず、すぐに答えるようにして欲しい。そうしないと、前に進むことはできない。

 私は小売りの立場から全農に入ったが、一番すごいと思ったのは、産地というリソースがあることだ。JAグループとしてのリソース。あとはそれをうまく利用して、原石を磨くか、磨かないかだ。それはすごいことで、一般の小売りにはできないことだろう。

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