「バリューチェーンを作る」と話す全農の戸井和久チーフオフィサー(東京・内神田のコープビル)
「バリューチェーンを作る」と話す全農の戸井和久チーフオフィサー(東京・内神田のコープビル)

「今までの立ち位置じゃだめだ」

全農で仕事をして、まず何を感じましたか。

戸井:職員はすごくまじめ。1つのことを深掘りする能力は結構高い。言われたことを、非常に忠実にやる。長沢豊会長と神出元一理事長のもとで風通しのいい組織になり、やらなければならないことを着実に進めている。

小泉氏の登場はどう影響したのでしょうか。

戸井:全農はもっと積極的に自分を出していかなければならない時期に来ていた。そこで(小泉農林部会長の登場という)刺激的な事件があり、自己改革をすることになった。肝心なのは、これまでの「全農マン」としての意識を変えられるかどうかだ。人によって差があると思う。トップと現場の温度差はおのずと出る。ただ、今はだんだんベクトルが合ってきつつある。

 去年4月に私が来たとき、立ち位置をどうしたらいいのか迷った人もいると思う。自分たちの仕事について、プロダクトに近い一次問屋的なイメージを持っている人もいた。じゃあ、私は何のために入ったのか。製造業じゃなくて実需者、顧客に近づかないと、生産振興をすることはできない。今までの立ち位置じゃだめだという意識が浸透しつつあるように思う。

JAビルではなく、小さなコープビルに入ったのは驚きでした。

戸井:この組織がJAビルにあったら、実需とのコンタクトがとりにくかった。あそこにいて、実需に近づくことができるだろうか。全国のJAグループの皆さんは来てくれるかもしれないが、イオンやヨーカ堂、ロイヤルホストの皆さんにあのビルに「来てくれ」と言うことは難しいのではないか。まず大事なのは意識を変えることだ。

 卸の意識は「自分がモノを売っている」というもので、どうしても上から目線になりがちになる。ずっとそうやってきたのかもしれないが、本来は買う立場にある小売りのところに行って、意見を聞かないといけない。

 だからまず、「出ましょうね」と。その手前として、商談するにしても、相手が来やすいようにしないと、相手に近づくことはできない。JA、全農の県本部、各子会社の皆さんがJAビルに行って、一々アポイントメントとって、相手を呼び寄せる。これほど無駄なことはない。もっと言うと、ここにいてはいけないのかもしれないが、両者の接点としてここは重要だと思う。

それは、JAビルでは難しいのですか。

戸井:あそこにいたら、いくら「プロダクトアウトからマーケットイン」と言っても、自分たちの意識が変わらない。だから、相手にも伝わらない。

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