問題は、日本の稲作が国民にできるだけ安いコメを提供するための努力をつくしているかというと、そうでない点にある。全国の産地が特Aを競い合い、ブランド力を高めようとしている努力は否定しない。だが農政が、補助金を使った生産調整(減反)でコメの需給を絞り上げ、その結果、業務用のコメが足りなくなり、米価が上がる現実をどう肯定すればいいのだろうか。

非効率の原因は狭さだけではない

 そう書くと、「日本の稲作を米国のように効率化するのは無理」という声が出るかもしれない。だが、日本の稲作が非効率なのは、米国と比べて田んぼが狭いことだけが原因ではない。同じ面積で比べても、日本のほうがずっと収量が少ないのだ。

 いまから約半世紀前、コメの減反を始める前は、日本の稲作の反収は世界でトップレベルにあった。だが、減反開始とともに収量の向上は政策目標から外れ、研究面でもタブーになった結果、いまや米国やオーストラリア、エジプトなどに大きく引き離された。かつて、反収が日本よりずっと少なかった中国も、日本と肩を並べつつある。

 向かうべき方向は明かだろう。効率の向上には限度がある兼業農家にまで幅広く補助金をばらまく農政をあらため、担い手に支援を集中して生産効率を可能な限り高める。それでもおそらく、米国や豪州に効率で張り合うことは難しいかもしれない。だが、ぎりぎりまで努力する姿をはっきり示したうえで、それでも無理な部分を税金で守ることを、国民は否定しないだろう。

 ちなみに、今回は安全面には触れなかったが、世界の農業大国と比べて湿度の高い日本は、一般的に農薬の使用量が多い。病害虫のリスクがより高いからだ。日本の農業を強くするためにこそ、「国産だから安心」という漠然とした思い込みに安易に乗っかる危うさを、最後に強調しておきたい。

効率の向上が稲作の将来を左右する
新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

日本経済新聞出版社刊 2015年1月16日発売