農産物や農業資材の売買を手がける農協の全国組織、全国農業協同組合連合会(全農)の改革論議で昨年、焦点の1つになったのが委託販売から買い取り販売への移行だった。

 農協は一般的に委託方式で農産物を売っている。地域農協や全農は販売手数料を受け取るが、コメや野菜がいくらで売れるのかという販売リスクは負っていない。最終的にリスクを負うのは農家だ。これに対し、買い取り方式は農産物の所有権が農家から移転するので、安値でしか売れなかったときのリスクは農協や全農が負うことになる。

 もともと農協の農産物販売がいまの形だったわけではない。戦中の統制経済からの移行に際し、戦後選んだのが委託方式だった。当時の農協は規模が小さく、財務基盤も脆弱で経営危機におちいっていたため、リスクの小さい方法を選択した。その結果、農家は農産物市況の変動にさらされることになった。

「1年」めぐる政治バトル

 政府の規制改革推進会議はこれを問題視し、昨年11月にワーキンググループが出した意見で「1年以内に全量買い取り方式に移行すること」を全農に求めた。「みずからリスクをとって真剣に農産物販売にとりくむこと」を促すのが目的だった。「真剣に売っていない」と言わんばかりの文言で、しかも「1年」という期限を切って見直しを求める提言に全農は猛反発した。

 そのあとはお決まりの政治バトルだ。自民党の小泉進次郎農林部会長やベテラン農林議員、農協幹部が水面下で激しい綱引きを繰り広げ、「1年」という期限は抜け落ちた。政府の決定は買い取りへの移行を促すにとどまった。全農の自主判断にゆだねたわけだ。もちろん、その「自主判断」も引き続き政府・与党との調整で決まるが、「1年」という期限は復活しない見通しだ。

 農協も民間組織である以上、政府が経営のあり方を強制することはできない。にもかかわらず、その「自主判断」に政治調整が伴うのは、農協が政治と持ちつ持たれつの関係を続けてきたからだ。ただし、委託方式から買い取り方式に徐々に移行すべきだという提言じたいは間違ってない。それは外部から言われなくても、農協がみずからの判断で農家のために実現すべきことだ。