今回は温度や湿度を測るセンサーがテーマ。農場の大規模化や人手不足を背景に農業にもIT(情報技術)化の波が押し寄せている。環境情報をリアルタイムで検知するセンシングはその中核の技術とされている。

 測るデータが多いほど、農場の様子を詳しく知ることができる。だが、計測器の数が増え、重装備になれば、投資額も運営費も膨らむ。そこで、コストの抑制が課題になるわけだが、今回取り上げるのはさらにその先。「知りたい情報を測らずに知る」という逆転の発想で作り上げたシステムだ。

使った分だけ、水を供給する

 紹介するのは、ベンチャー企業のルートレック・ネットワークス(川崎市)だ。明治大学と共同で、AI(人工知能)を使った養液土耕システム「ゼロアグリ」を開発した。2013年に初代のシステムを完成させ、2016年には第二世代を投入した。すでに国内外の80カ所の栽培ハウスに導入済みだ。

 システムを導入するハウスの栽培方法には1つ条件がある。水を作物にかけるのではなく、点滴チューブで肥料と一緒に地中に供給する。ハウス内にできるだけ均一に養液を入れ、収量と品質を安定させるためだ。水と肥料の供給量はクラウド上のAIを使い、自動でコントロールする。データを見て農家が作業を変えることも可能だが、水やりと施肥は基本的に自動だ。

 センサーで測るデータは地上と地下の2つに分かれる。地上の情報は、日射量と温度と湿度。地下の情報は地温と水分量と土壌ECだ。ECは電気の伝導率を指し、肥料の量が増えるとECの値が上がる関係にある。

 ルートレック・ネットワークスの共同創業者の時津博直氏はゼロアグリのコンセプトを次のように説明する。

 「植物が今日どれだけ水を使ったのかを、今日知りたい。使った分だけ、水を供給するシステムです」

ゼロアグリのシステムのイメージ