土づくりの技術は、さらなる前進をもたらした。レンコン畑は一見、田んぼと同じようにみえる。だが実際は、田んぼは水の下の泥の層がレンコン畑の3分の1程度しかなく、レンコンの栽培には適さない。レンコンが泥の下の硬い粘土層に潜り込み、いびつな形になってしまうのだ。ところが宮野さんは、土の構造を変えることで、薄い泥の層でレンコンを育てることに成功した。

 ふつうのレンコン畑と比べ、泥の層が薄い水田のハンディを乗り越えると、逆に大きな利点がみえてきた。油圧ショベルを農場に入れることができるのだ。ふつうのレンコン畑は、ホースから噴出する水で土をほぐしながら、もう片方の手でレンコンを探して収穫する。

 これに対し、田んぼでは水を抜いてから油圧ショベルで表面の泥を削り取ることで、レンコンを目で見て収穫できるようになったのだ。「レンコンの栽培はほとんど機械化されていない」と前段で書いたが、機械化がまったく不可能なわけではない。宮野さんはこの技術を徳島の産地で学んだという。

なぜ日本一を目指すか

 「レンコンの労働時間はコメの7倍。生活しなければならないので、死ぬ気でやってました。夜中の12時に畑に入ったり、つらい思いをしたからこそ、効率化が大切だと思ってます」。その模索が、水田でのレンコン栽培につながった。

 この意味がおわかりだろうか。コメは一般的には収益性が極めて低く、高齢の稲作農家の引退が加速している。これから各地で田んぼは余る。そうしたなか、田んぼでレンコンを育てることが可能になったことで、規模拡大を加速させる道が開けつつあるのだ。

 当面の目標はレンコンの栽培面積をいまの約3倍、13ヘクタールに広げることだ。有機農法のレンコン栽培では日本で有数の規模だろう。

 ではなぜ日本一を目指すのか。「なぜ日本一かと言うと、地域に認めてほしいからです。うちらのビジョンは農業を地域を支える産業にすることです」。そのためには、農業が雇用の受け皿になる必要がある。

 現在、Oneは社員が9人、パートが3人の12人体制。だが、宮野さんにはひとつの悩みがあった。「もうけないと、若い子を農業に呼び込めない。でも、会社と呼べるような仕組みに全然なってない」。

 次回は、宮野さんがトヨタから学んだことをお伝えしようと思う。

新たな農の生きる道とは
コメをやめる勇気

兼業農家の急減、止まらない高齢化――。再生のために減反廃止、農協改革などの農政転換が図られているが、コメを前提としていては問題解決は不可能だ。新たな農業の生きる道を、日経ビジネスオンライン『ニッポン農業生き残りのヒント』著者が正面から問う。

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