越後ファームのコメのボリュームゾーンは、5キロで5000円のコシヒカリという高級米。2017年産でそれに新之助も加わった。だが、もっと破格の高値のコメがある。何と5キロで2万5000円。農薬も肥料も一切投入せず、掛け流しの雪解け水だけで作ったコメだ。

掛け流しの雪解け水だけで育てたコシヒカリ。稲を持っているのは近正宏光氏(新潟県阿賀町)

 有機肥料を使う有機農法と区別するため、一般に自然農法と呼ばれている。越後ファームは田植えも稲刈りもすべて手作業。「何も入れない」を徹底するため、収穫時に藁が田んぼに残らないようにしている。機械で脱穀してコメが傷つくのを防ぐため、使うのは昔ながらの千歯扱きだ。

モミを傷つけないために使っている千歯扱き(新潟県阿賀町)

 この超高額米については、これまでも何度か紹介してきたが、今回改めてふつうなら手を出しにくい高値の意味を聞いてみた。ちなみに、このコメは固定客がついていて、事前に予約が入るため、店頭にはまず出ない。

値段はシンボル

 「値段は経営者の思いで決めていいんですよ。商売チックな言い方になりますが、シンボルなんです」

 農業は効率的に食料を供給するため、有機肥料から化学肥料へと資材を発展させてきた。そのどちらも投入せず、水を流すだけで高い収量を上げることは不可能。そもそも生産効率の低い中山間地で、効率を一切省みずに作っているのが2万5000円のコメなのだ。

 どれだけ効率が低いかは、次の言葉でわかる。

 「この地域では、収量を10アール当たり480キロくらいに抑えるとおいしくなると言われてます。僕らの田んぼは420キロくらい。でも、肥料を入れない掛け流しの田んぼは60~120キロしかありません」

 近正氏はこの言葉に続き、「それが限界なんでしょう」と淡々と話した。「水だけなら、ふつうは育たない。それでもある程度は育つ」。そういうぎりぎりの環境で作っているので、病気が出れば全滅する恐れもある。2017年産はイノシシの被害にも遭った。近正氏は「それでもいい」と話す。

 「本当にてっぺんのコメは、売り上げがゼロ円でもいいんです」

 くり返しになるが、2万5000円のコメは毎年確実に売り切れる。だが、そのコメを大量に売ってもうけようとしているわけではない。それでも、と言うよりそれだからこそ、このコメをシンボルにした。

 「いつも言っているのは、付加価値と差別化。他と同じことをやっていたら、勝てない。後発なので、とんがっていくしかないんです」