では、本格的に栽培した2017年も思ったような食味にならなかったら、どうしたのだろう。この問いに、近正氏は「越後ファームの新之助としては店に出しません。うちは一般の新之助も新潟のいろんなところから仕入れて売っているので、それと一緒に出します」と答えた。

 微妙な話だと思った。自分の圃場で作って求める味が実現できなかったら、越後ファームの看板を外し、一般の新之助と一緒にして売るというのは、新之助という品種のブランド価値にとってプラスになるだろうか。この点を重ねて問うと、近正氏は逆の角度からその意味を説明した。

 「収穫後に食べて味を確かめます。それで満足いかないなら、越後ファームのコメとして高い値段をつけるわけにはいかないんです」

ブランドの本質を突く

 この辺りで近正氏の語り口は熱っぽくなっていたが、内容は冷徹だ。この冷ややかさは、コメのブランドというものの本質を突いている。

 コメのブランド競争が盛んになっている。その頂点とされるのが、食味ランキングの「特A」だ。審査の対象になるのは、産地と品種。だが、審査をしている日本穀物検定協会が「流通するすべてのコメを評価しているものではない」と強調しているように、持ち込まれたサンプルで特Aを取った品種が、すべて審査時の品質を保っている保証はない。産地の農家全員が、同じレベルのコメを生産しているとは限らないからだ。

 越後ファームと同様のことは、新規就農でイチゴを栽培している農家からも聞いたことがある。「うまくできたイチゴは自分で直接売ります。そうでなかったものは、農協に出荷します」。工業製品と違い、コメを含め、農産物は出来不出来の差がどうしても避けられない。それをひとくくりでブランド化するのか、選りすぐって高値で売るのかで販売戦略に違いが出る。

 この点は、本来は大きなポテンシャルを持つ農協が乗り越えるべきハードルを示唆しているのだが、今回の本題ではないので、話を先に進めよう。