植物工場をめぐっては、いまも様々な誤解がある。メディアの多くは、発光ダイオード(LED)のカラフルな光の下で育つ野菜にうっとりして、「これこそ農業の救世主」といったノリの記事を書く。一方、農業関係者の多くは「植物工場なんてうまくいかない」と冷ややかにみる。そのどちらも、正しくはない。

みらいと牛繁とJA東西しらかわ

 真実はどこにあるのか。それをさぐるため、昨年秋、この連載で2本の記事をアップした。1つは、画期的な技術としてメディアに盛んに取り上げられたベンチャー企業、みらい(東京・中央)の破綻の経緯を取り上げた記事だ(2016年9月30日「『夢の植物工場』はなぜ破綻したのか」)。同社はいま、通信・電設資材のマサル工業(東京・豊島)の傘下に入り、MIRAI(千葉県柏市)に社名を変えて再生の道を歩み始めている。

 もう1本は、焼き肉チェーンの牛繁ドリームシステム(東京・新宿)が植物工場から野菜を調達することになった背景を紹介した記事だ(2016年10月14日「ついに出た『植物工場があって助かった』の声」)。昨年8~9月の長雨や台風で他の外食チェーンが野菜の調達で苦しむなか、同社は植物工場と組むことで、焼き肉を巻くサンチュを安定して仕入れることに成功した。

 今回はその続編。取り上げるのは、農協として初めて本格的な植物工場を運営している東西しらかわ農業協同組合(JA東西しらかわ、福島県白河市)だ。この農協は、上記の2本の記事と関係がある。JA東西しらかわが植物工場をつくる際、指導を受けたのが旧みらいであり、旧みらいの破綻後、野菜の新たな売り先として登場したのが牛繁だからだ。

外見は倉庫のようにみえるJA東西しらかわの植物工場(福島県白河市)

 JA東西しらかわが植物工場の運営に乗り出した理由は、深刻かつ明快だ。2011年の東日本大震災で起きた原発事故の風評被害で、農産物の販売が大きな打撃を受けたからだ。放射線量が基準値を下回っているにもかかわらず、東京などに野菜の販促キャンペーンに行くと、市場関係者から「福島はひとつだから」「福島全体で問題がなくならないとダメ」と突き放された。

 そこで着目したのが、植物工場だ。人工光を使う完全密閉型の植物工場なら、風評がくすぶる田畑の土壌を使う必要がなく、外の環境と栽培室を遮断することができる。害虫や病気のリスクがほとんどなく、農薬をまく必要がないので、安全性を強くアピールできる。