誤解5:日本の製品はアフリカの市場に適合しない

 では、現在の日本のビジネスや製品は、アフリカのマーケットに適合しないのだろうか。答えはNOだ。すでに多くの製品が実はアフリカで使用されている。

 たとえば、製造業における機械・機器や原料といった分野がある。先述のインドミーが使う製麺機は日本製だ。ナイジェリアのラゴスで、インドミーの工場長は「日本企業以外の製麺機は使いたくない」と筆者に話した。筆者はアフリカ中の多くの工場を訪問して回っているが、日本企業の製品を見かけることは意外と多い。縫製工場ではJUKIやブラザー工業のミシン、豊田自動織機の織機が使われ、YKKのジッパーが購入されている。

工業用刺繍機世界トップメーカーである日本企業バルダンの刺繍機。ケニアの工場にて

 食品工場では日本製のオートメーション装置が使われ、ラベルプリンターや検査機器にも日本のものを見る。高度なパッケージの原料も使われている。建設産業ではマキタの工具が人気だ。島津製作所の画像診断装置や堀場製作所の糖尿病検査機器をもっと輸入したいと病院から頼まれる。大手の輸出農家に行けばブロッコリーを始めとしたサカタのタネの種子が必ず使われているし、アフリカの女性向けつけ毛の工場が買う原料はカネカなど日本の化学メーカーが提供しているのは有名な話だ。

 アフリカでの競争は厳しいと先に述べたが、信頼性や丈夫さ、効率性に大きな優位性がある日本の産業資機材は、比較的競争に巻き込まれず、営業費用も多くは必要とせず、販売することができる。アフリカでも、事業継続性や品質の担保、効率が大事な生産現場では、価格が高くとも日本企業の製品を使いたいのだ。

 もっとも、このような品質一番の商材以外にも、日本企業にとってアフリカで事業可能性がある産業や商材は、より広範囲にわたる。企業規模の大小に関わらず、効率を重視する、安定した経営を行うようになった日本企業に、アフリカでのビジネスは、グローバルな競争に伍せる企業や、新興国で収益を生める企業になるための、または失ってしまったベンチャースピリットを取り戻すための、機会を提供する面もある。

 関西ペイントは、日本ではリーディング企業でも、世界のシェアでみると二番手集団に過ぎない。トップグループに入るために、自動車から建築用塗料へ重点を移すことを決めた後、アフリカの来たる大きなマーケット獲得のため、南アフリカの塗料メーカーを買収した。買収によって、マーケットという直接的な恩恵のみならず、世界で伍していくためのマインドセットを得たという。同社は「アジアのみで事業をやっていたときと比べて、世界市場という地図の見え方ががらりと変わった」と言う。アジアは日本にとってやはり、日本の延長線上でビジネスができる場所だ。コンテキストを同じくしないアフリカは、よその人といっしょにやっていくグローバルビジネスの入り口なのだ。

 パナソニックはアフリカにおいて家電の販売を強化することを発表しているが、先日、スマートフォンの販売をケニア、ナイジェリア、ガーナで開始すると新聞報道された。インドですでに中国メーカーへの生産委託によるスマートフォンを販売しており、その現地会社のインド系社長はパナソニック本体の役員でもあることが、新興国での本気度をうかがわせる。生産体制もマネジメントの方法も、おそらく日本風ではない方法になるのだろう。パナソニックがアフリカでのスマートフォンビジネスをやりきったときには、ガラパゴスなどと言わせない、新興国で他のどんな商材でも売れる強いメーカーとなっているだろう。アフリカにおいて製造業の進展や世界のサプライチェーンへの参入は喫緊の課題だ。アフリカと日本が、その両者の利害によって、再び近づく時がきている。

誤解6:アフリカは暑い

 アフリカ大陸は日本の80倍の面積があり、気候も多様である。よって一概には言えないが、南アフリカのヨハネスブルグなど、主要な都市は標高が高い場所にあることが多く、年中冷涼だ。TICADが開催されるナイロビは1年を通して年中軽井沢のような気候で、ちょうどいまは東京でいうと11月頃の気温だろうか。

 寒いといってもよいくらいで、朝晩は10度程度まで冷え込み、筆者はナイロビの家で毎日フリースを着ているほどだ。TICADに向けてアフリカを訪れるみなさんも、暖かい洋服を用意して体調に気をつけてきていただければと思う。