誤解3:アフリカはモバイルマネーが普及している

 ケニアで携帯電話のSMSを使ったバンキングシステムである「M-PESA(エムペサ)」が爆発的に普及したことで、アフリカはリープフロッグ(蛙跳び。新しい技術が、それより古い技術が存在していないのに一足飛びに導入されること)により携帯が普及し、銀行口座を持たない人のあいだでモバイルバンキングが一般的になっているという印象が持たれている。

 M-KOPAもそうだが、モバイルマネーを下敷きにした新たなサービスも、多く生まれている。モバイルマネーやSNSに蓄積された情報を信用情報として用いて、少額ローンをモバイルマネー経由で提供するサービスは、ケニアで大人気だ。まさに「フィンテック」の実例がここにはある。

 ただし、国によって普及度には大きな違いがある。正確にいうと、これほどモバイルマネーが普及しているのは、アフリカの中でもケニアだけだと言ってもよいかもしれない。

 ムーディーズが今年発表した調査によると、アフリカ各国のモバイルマネー口座保有率は、ケニアが圧倒的に高く6割弱、続くのはウガンダの35%、コートジボワールの25%となる。他の国はそれより低い。

 当社が拠点を持つ国でも、ケニアはモバイルマネーを使っていないと逆に「なぜ?」と聞かれるくらい常識である一方、ナイジェリアは既存の金融機関が強いため、普及しているのは銀行口座をモバイルで操作できる、日本の銀行が提供しているのと同じようなモバイルバンキングのみだ。携帯のみで金銭のやりとりができる、M-PESAのような狭義のモバイルバンキングは、ナイジェリアでは今年になってようやく始まったばかりだ。

 コートジボワールにはモバイルバンキングは存在しているものの、当社推計では実際の使用率は10%未満だ。ケニアでは一般のパパ・ママショップがモバイルマネーと現金を交換するエージェントとなったことで、普及が進んだ。パパ・ママショップは日銭があるため資金供給を受けずとも独自資金で換金のための運転資金を回すことができ、どんな田舎にも存在するため多くの人々が利用できる。コートジボワールの場合はまだ小売の密度が高くないために、エージェント網が発展しないのだ。

 逆にいうと、ケニアで起こったようなモバイルマネーの普及とそれを基盤にしたさらなるサービスの誕生と発展が、アフリカのあちこちでこれから始まるという膨大な可能性が残されているとも言える。