トヨタもナイジェリアで現地生産を開始

 一般的に日本企業は、生産性が低い製造や採算が合わない工場投資はしない傾向にある。まず製造を始めることで、流通やポジションを他社より先に手に入れて、市場での競争に備えるという考え方は、あまりなじまないようだ。

 ただし、最近は日本企業にもあらたな動きが見られる。ナイジェリアにおいて、トヨタ自動車がついに組み立て生産を開始すると発表したのだ。商用車を中心に、年間3万台をナイジェリアで生産する。

 これは、輸出拠点としての生産ではなく、ナイジェリア国内での販売のための生産だ。ナイジェリアではすでに日産自動車とホンダが現地生産を開始しており、生産のライセンスを取得したと現地紙が報じているほかの日本の自動車メーカーも複数ある。トヨタはナイジェリアでの新車市場で3割のシェアを占めており、「ハイラックス」を中心に商用車が売れ筋だ。昨年12月には、ナイジェリアで組み立てられたハイエースの第1号車がお披露目された。

 ただしナイジェリアの場合は、別の背景もある。政府は2014年6月、国内生産への誘導のため、完成輸入車の関税率を70%まで大幅に引き上げたのだ。ナイジェリアの巨大なマーケットで新車を販売し続けるには、ナイジェリアで作るしかない状況にある。自国で製造しなければ販売もさせないという政策は、今後他国においても取り入れられるようになるだろう。

ナイジェリアで組立生産された日産車(ナイジェリアにて筆者撮影)

 サントリー食品はこの1月、ナイジェリアのグラクソ・スミスクラインの飲料部門に買収提案を行っている。成立すればサントリーはナイジェリアにおいて、飲料の生産、ボトリング、販売というサプライチェーンを得ることになる。ナイジェリアにおいてエアコンでシェアを持つパナソニックは、安定的な供給を実現し機会損失を防止するため、これまで輸入で対応していたエアコンとテレビを現地生産に切り替えることにしたと現地メディアで報道されている。

 ヤマハ発動機はこの5月、ナイジェリアに二輪車の組み立て工場を開所した。日本たばこ産業(JT)は先日、エチオピアのタバコ専売公社の民営化の入札に、ライバルの2倍以上の価格となる560億円を提示した。現在1社独占のタバコ専売公社は、製造のみならず、エチオピア国内の流通を完全に押さえている。この工場を他社に取られれば、将来的にエチオピアの市場で高いシェアを得るのは不可能だろう。

 アフリカは一部の国を除いて、製造業を行うには環境が整っていない。「アフリカなんかで製造して採算は合うの?」と問われれば、日本企業が磨いてきた生産効率のよい製造業を行う状況にはなく、すぐに採算は合わない。ただし、競争の観点からすると、環境が整うのを待っていられないのも実際だ。シェアがとれるようになり、生産性が担保できるようになったら工場投資を検討するばかりでなく、市場と流通を押さえるために、いま作り始めるという逆の発想も必要だ。