ケニアで“パパママショップ”の営業にまわる日本の食品メーカーの現地スタッフ。店主に「今は新しい商品を置くスペースがないから」と断られて苦笑い

 日本の大きな内需市場で商売をしてきた企業は、市場や流通のあるべき姿やオペレーションのイメージも日本が基準になっている。投資の意思決定の物差しも日本の経験が前提になってしまっている。

 「競合他社が現地の市場特性や流通構造に気づき、小売店への営業に人を集中的に投入してドミナントを築いているにも関わらず、うちは日本やアジアでの成功体験から、スーパーの棚を押さえてマーケティングをやれば売れるはずという発想から抜け出せていない」

 アフリカで4年以上営業活動を続けてきたがシェアを拡大できず、撤退の危機に瀕している、日本のある消費財メーカーの現地社員は、アフリカでのビジネスの成功法則を理解しようとしない日本の本社に対するいら立ちを隠さない。「アフリカでモノを売るのは新規事業を立ち上げるようなもの。ある程度の資金を最初に投じないと売り上げはついてこないが、過去の経験とマクロ数字に照らして論じているだけの本社はそれに気づかない」

 同じ頃に同じ国で事業を開始した外資系の競合他社が、着実に売り上げを伸ばしているのとは対照的だ。

 アフリカに進出する世界の企業は、国ごとに異なる市場特性や商習慣を学び、草の根からの販売網の構築に投資し、試行錯誤しながらオペレーションを組み立てている。そうやって時間をかけて対応してきた「経験値」の差が、アフリカにおける消費財ビジネスの成否を分ける。日本やアジアでの成功モデルを当てはめるのではなく、アフリカでの事業モデルを一から構築する。日本企業がその覚悟と決断ができるか否かで、将来のアフリカ市場を巡る勢力図は大きく変わるはずだ。また、そこで得た対応力は、アフリカ以外の市場でも活かされるだろう。

【ポイント④】アフリカの良い投資先は、「見えないところ」にいる

 00年以降アフリカでは、世界の金余りも背景に、エクイティ投資やベンチャー投資が盛んになった。海外からの事業投資はアフリカにとっても経済発展の命綱だ。

 三菱商事はアフリカの広い地域でコモディティのバリューチェーンを持つ農業商社のオラム社に出資し、三井物産はLTE事業や農業商社に出資している。豊田通商はCSV(共有価値の創造)ファンドからケニアの医療機器販売会社やザンビアの農業法人に出資している。アフリカ向けプライベート・エクイティ・ファンドにリミテッド・パートナー(LP)として出資している日本企業もある。

 アフリカへの事業投資は、「不確実性の掛け算」だ。マクロ経済や政治といったカントリーリスク、為替の不安定さに加えて、金融システムや税制、規制にも不透明さが残る。大きな投資ができる企業は取り合いになり、取り合わずに済む企業は見つけるのにコストがかかり、いずれにせよ儲けが少ない。思ったように業績を上向かせることができずに終わる投資も多く、次々転売されることで生き延びている被投資企業もある。

 アフリカでは、国際機関や先進国の財団も投資を多く行っている。かつては、国際カンファレンスを転戦して人脈を広げ、感動的なプレゼンテーションのうまさで国際機関や財団、さらには民間企業からの投資や補助金を次々得るけれど、実のところ事業実態がない、「Grantrepreneur(“補助金目当ての起業家”の意)」と揶揄される詐欺のようなアフリカの「起業家」が跋扈していた。

 投資する側の、自社で見つけて判断するコストと「リスク」に鑑みると、大きな組織のお墨付きに乗りたいという意識が利用されているとも言える。しかし、成功する投資は、まだ他の人が気づいていない良い事業と良い経営者を足を使って見つけるに限るという鉄則は、アフリカでも変わらないのだ。

 最近は、アフリカへの大きい投資は、シリコンバレーからくる。シリコンバレー式に、テック分野のスタートアップを対象に、初期の段階から将来の成長を見込んだ多額の投資をしている。アフリカのユニコーン企業はまだ2社程度だが、携帯やITを用いた決済や基礎的サービス、BtoBサービスやプラットフォームまわりへの投資マネーの流入は続きそうだ。

 一方で、「フィンテックだ、モバイルだ」といった喧騒から離れた、地味ではあるが確実にニーズが眠る「オールドエコノミー」の業界に、ひっそりと良い起業家や経営者が隠れている。物流、食品加工、飲食、農業といった業界だ。中小企業から大企業へと成長するのが困難だと言われてきたアフリカの企業だが、ここ最近は成功例も出てきている。こういった企業は金融投資家にとってだけでなく、事業投資家にとっても、アフリカの市場や経営を知ることができる良いパートナーになるだろう。