アフリカで港湾、鉄道、道路といったインフラが、中国の「早い」資金で続々と整備されているように、この方針転換がアフリカの工業化も後押しする可能性がある。また、アフリカの国々自身も、国内製造業への投資、原材料の国内調達、外資製造業の誘致への取り組みに真剣になっている。資源のない国はもとより、石油で潤ってきた資源国でも、原油価格の下落によって大きな痛手を受けたことが、やっと工業化に向かわせるきっかけとなった。

 日本企業が手がける製造業向けの機器やシステムは、アフリカでもそれぞれの業界内で高い評価を保っている。高い生産性と事業継続性を手に入れたい現地の製造業は、高くてもいいものを買いたいのだ。アフリカの工場を訪れると、現地に代理店もないのに日本企業の機械を使っているのをよく見る。インターネットで検索し、友人・知人のツテをたどって、わざわざ欧州やドバイから相場より高い価格を払って何とか手に入れているのだ。

 これほどの「ラブコール」があっても、現地には日本製品を扱う代理店がなかったり、代理店があっても、日本製品を積極的に販売したくなるような取引条件や関係性を構築できていないために、十分な営業活動がされていなかったりして、みすみす売り逃している。政府向けのセキュリティ、通信といった分野も含め、アフリカで日本企業の製品がデファクトスタンダードをとれる機会はまだまだ残されているというのにだ。

【ポイント③】消費財ビジネスは「現地経験の差」で勝負が決まる

 消費者相手の食品、家電、日用品といった消費財ビジネスは、一般的に消費意欲が旺盛な生産年齢人口が多い地域ほど、事業拡大がしやすい。日本では60年代から始まった生産年齢(15歳以上65歳未満)人口の比率が上昇し続ける「人口ボーナス期」が、世界第2の経済大国にまで押し上げ、消費ビジネスを花咲かせた。その時の成功体験をもとに、日本の消費財企業は製品や販売手法をアレンジして日本からアジアへと市場を「拡張」してきた。ところが、アフリカにおいては若い人たちが増えているにもかかわらず、日本企業の成功例はもとより、進出事例さえも少ない。

ケニアで開店した日本のファッションカジュアル雑貨ブランド「名創優品(MINISO)」の店舗。「日本ブランド」を前面に押し出している。2017年8月にアフリカに初進出し、既に南アフリカ、モロッコ、エジプト、ナイジェリア、マダガスカル、そしてケニアに店舗展開している

 南アフリカとナイジェリアは、消費ビジネスでもアフリカの中心地だが、ここ数年は不況に沈んでいる。意外なことにこの不況は、消費財企業の勝ち組と負け組をはっきりさせる結果となった。例えば、インフレが進み雇用が切られる最悪の経済状況だった17年までのナイジェリアで、食品世界最大手のスイスのネスレと英蘭ユニリーバはどちらも増収増益を達成している。

 筆者の会社であるアフリカビジネスパートナーズは、ナイジェリアとケニアで、一次卸から路地の“パパママショップ”に至るサプライチェーンにおける、消費財の品揃えと価格の動きを毎日調査している。ネスレ、ユニリーバ、コカ・コーラのデータを見ると、市場動向に合わせて、日々絶妙な値上げやサイズの変更を行い、末端まで商品供給と価格浸透を徹底するための工夫をしている様子が見て取れる。

 これらの企業の最大の強みは、商品より、ブランドより、何よりも、「市場の変化」を解釈し、それに即応し、オペレーションに反映させていける「対応力」なのだ。それは一朝一夕では身につくものではない。人口の多い場所にいけば成功が約束されるわけではなく、自国とは違うその地で対応していくことを可能にする経験と知見が成否を分けるのだ。