:うわっ、美味しそう!

 そばが、茹でたて特有のさざ波のような煌めきに包まれている。

 そばに目を凝らす。挽きぐるみらしい透明感とうっすら青味を帯びたメンには僅かに細かな外殻が紛れていて、神々しい。盛りつけられたそばの幾重にもアーチを作っている様も凛々しく、茹で加減から盛りつけに至るまで、技術を駆使しているのが分かる。

 おそばの40円の値上がり、さらしなそばから挽きぐるみへの変更への疑問、これら全てが吹き飛びました。ああ、早くこのおそばが食べたい。

 しばし待つ。カウンター越しにおそばの載ったトレイが手渡された。Y氏ご注文のお品、「満腹 上天丼セット」720円が、こちら。

 イトウの注文のお品、「冷やし 月夜のばかしそば 大盛り」490円も出来上がった。

 単純と言われようが、盛りつけのエレガントさ、いえ、単に器が違うだけでも味は違ってくる。

見た目も味も、これなら文句ないでしょう

 Y氏ご注文の丼ものにそれが顕著で、円錐状のような口の広い丼はご飯をよそうとフワッと盛れるだけでなく、内側に熱をこもらせずお米の粒が蒸れすぎない。よって米の美味しさと、上に載せられた天ぷらのサクサク感と滲み込んだつゆの旨さが存分に堪能できる。揚げ油の質も良くて衣が軽やか。海老の火の入り具合もよろしく、海老の旨味の強さが引き出されている。…以上、Y氏の「満腹 上天丼セット」を試食させてもらった感想です。

 当方注文の「月夜のばかしそば」は、元々完成度の高いメニュー。この度の挽きぐるみの風味のあるおそばとの取り合わせはまた格別で、汁とっくりから好みの加減に汁を注げば、キリッとしたお味がそばに良く絡み、卓上にあるねぎやカリカリ小梅に手を伸ばすのを忘れるほどに食べるのに没頭、たちまちのうちに丼が空になっていたのでありました。

 食べ終わる頃合いで、カウンターから湯桶が置かれる。

Y氏:あー…。

:ホントに。美味しかったー。

 お味もさりながら、インテリアや器、きびきび働く厨房のスタッフの様子なども、我々を多いに満足させたのでした。

 その厨房ではかき揚げの注文をセットしている。薄衣のサックリと上がったかき揚げが皿の上に置かれた。