過去最高益が遠ざける危機感

 夜間飛行制限の緩和や第3滑走路の建設と、次のステージを目指す成田空港。しかし、航空会社のホンネを探っていくと、なかば諦めに近い声が聞こえてくる。

成田空港の使い勝手について、現役機長にも話を聞いたが、評判は芳しくない

 大手航空会社の機長によると、成田は歴史的経緯のため誘導路が曲がりくねっている部分(シケイン)があり、構造的な問題があるという。空を飛ぶために作られた飛行機にとって、地上走行は苦手分野。特に曲がることは素人が想像する以上に難しい。

 「誘導路は見通しが良くなければいけないのに、シケインは見通しが悪いところもある。まずはこうした基本的な部分から改善すべきではないか」と、前述の機長は指摘する。国やNAA、自治体は、果たして飛行機を操縦する上での問題点を十分に把握しているのか、第3滑走路の議論を取材する度に、私は疑問に感じる。

 そして、海外の航空会社幹部からはこんな指摘もあった。特に夕方の混雑がなぜ起きているかということだ。「機材にトラブルがあっても飛ばせるようにするためには、早めの出発時刻を設定せざるをえない。夜11時までの運用時間となれば、2~3時間は余裕をみるので、結果として出発が夕方に集中してしまう」と説明する。

 もし飛行機がその日のうちに飛ばないとなれば、数百人が宿泊できるホテルを手配しなければならない。さらに、ほかの便の欠航が発生してしまえば「数千万円の損失につながることもある」(前述の幹部)と、わずか1便の欠航が航空会社の損失だけではなく、多くの乗客にも影響を与えかねないのだ。

 では、夜間の飛行制限の緩和はどう影響するのか。「機材整備で時間が掛かってしまえば、深夜2時のように飛べない時間帯に掛かってしまう可能性もゼロではない」(前述の幹部)として、飛行できない時間帯の離着陸が許可される条件が悪天候などに限定される以上、「より制約が少ない空港へシフトするのが自然な流れ」と、24時間運用空港である羽田が重視されると説明する。

 「我々としては成田に思い入れがあるが、本国では『制約の多い成田になぜ残る必要があるのか』という意見が必ず出る」と、複雑な心境を明かす。

 そして、この幹部はNAA社員の温度差にも踏み込んだ。「若い人たちは危機感があるが、国際線全盛期を知る人たちは必ずしもそうではない。毎年新しい航空会社が乗り入れ、新路線が増え、過去最高益が続く以上、危機感がないのではないか」と指摘する。

 NAAの2016年3月期通期の連結純利益は、前期比23.4%増の242億5400万円と開港以来初の200億円超えとなった。売上高は2184億8000万円(前期比7.5%増)、営業利益は433億800万円(11.9%増)、経常利益は385億5800万円(15.6%増)と、増収増益だった。

 こうした好調さゆえに、特に年配の幹部には危機感が感じられないという。「本国が就航するメリットがないと判断すれば、羽田シフトは止まらないだろう。そして、海外の航空会社が撤退してもあまり意識に変化はなく、ANAやJALが国際線を大幅に減らして、初めて危機感を感じるのではないか」と手厳しい。

 国際線が就航する首都圏空港は、地震などの災害リスクや今後の訪日客増加を考えれば、成田と羽田の両空港が必要だろう。しかし、夜間の運用時間制限の緩和や第3滑走路の建設といった、今後の増強策以前に、やるべきことはまだあるのではないか。

 成田の発展のために、より深い議論が活発になってほしい。